<まちかどエッセー・氏家靖浩>川の流れのように

うじいえ・やすひろさん 1966年大崎市生まれ。古川高、宮城教育大卒業。現在、仙台大体育学部健康福祉学科教授。博士(医学/香川大)。公認心理師、精神保健福祉士、学校心理士。千葉ロッテマリーンズファン。仙台市青葉区在住。

 私はプロ野球・千葉ロッテを応援してきて、一年で一番楽しいのはキャンプの時だと思っています。練習風景には明るい話題が多いからです。でも、だんだん気分はめいってきて開幕戦は重い気分だったりします。
 でも昨年と2011年はプロ野球の開幕が本当に楽しみでした。昨年はさておき、11年は東日本大震災の年です。あれだけの大変なことがあり、延期したとはいえプロ野球の開幕という日常の風景は、困難な状況に置かれた私たちに大きな希望をもたらしました。どんな困難な時でも、一人でダメだと下を向かず、日常を見つけだし、仲間と少しでも前進することが、とても大切なんだと実感した春でした。
 私は登米市で心の相談を担当している最中に東日本大震災に遭遇しました。直後、停電と激しい吹雪の中、住民の皆さんと「おっきな地震だったっちゃね。んでも、がんばっぺしね」と気持ちを一つにしただけで「負げねど」という勇気が湧きました。
 ちょっと困ったのは私を心配して寄こされた携帯電話の大量の留守電やメールでした。「元気か?」という途切れ途切れの大量の録音が、逆に私の元気を奪いました。
 遠方で災害が起きれば、家族や友人の安否が気になるのは当然です。でも、今のように個人でスマートフォンを持つ時代、あまりにも個人のやりとりが多くなると、大変な場所にいる人がその場ですぐに取りたい連絡の邪魔になると思います。
 遠方にいて大変な災害から距離がある人ほど、すぐに連絡を取るのではなく、タイミングを見計らって連絡を取られた方が良いと思います。これが、私が災害から得た教訓です。だから災害に遭遇してしまった方も「大丈夫だ。かまねでけろ(かまわないでくれ)」とすぐに発信すると良いのではと思います。
 いずれにしても、災害も最近の重苦しい状況も楽しいものではありません。でも悪いことばかりではないと信じて、名曲「川の流れのように」を思い浮かべて、右に行ったり左に行ったりしながら、一人で下を向かずにみんなで前向きに春も迎えたいものです。
 さて私は、職場近くの桜が満開になっている白石川の一目千本桜を思い浮かべましょうか。
(仙台大教授)

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まちかどエッセー

 仙台・宮城在住の執筆者が、それぞれの活動や暮らしで感じたことをつづります。


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