社説(3/8):東日本大震災10年/なりわい再生 支援策検証を

 東日本大震災の被災地の中小企業や1次産業の現場には事業再開を促すため、質、量ともに過去に類を見ない支援策が講じられた。人々の暮らしや地域経済を支える「なりわい」再生のためだ。

 支援制度の一つに震災直後の2011年6月に国が創設したグループ化補助金がある。被災企業がグループを組んで復興事業計画を作り、地域経済や雇用維持に重要などと認められれば、施設や設備の復旧費を助成する。4分の3(国2分の1、県4分の1)という高い補助率で再建を後押しした。

 東北経済産業局のまとめで、震災で被災した青森、岩手、宮城、福島4県の計663グループ、延べ1万231事業所に交付され(昨年末時点)、補助総額は約5098億円に上った。

 地域全体の再生に取り組む企業グループに資金を投じるとの考え方に基づく。阪神大震災(1995年)では低利融資や利子補給が中心だったのに対し、実質的な個別事業者支援に踏み込んだ形だ。

 石巻地方の水産加工会社はグループ化補助金が回復の足掛かりになった。被災した設備のうち売り上げの約8割を占めた練り物工場を再建せず、市場動向を考えて総菜工場に絞って補助金を申請。販路開拓にも努め、フル生産に近い状態を確保した。従来の経営課題を見据えた上での選択と集中、進めるスピードが成功の鍵を握ったといえる。

 一方、グループ化補助金などを充てて被災設備を元通りに復旧させても売り上げの回復に至らず、自己破産などを余儀なくされた企業は多い。民間信用調査機関の調査によると、東北の今年1月までの震災関連倒産は440件に上る。

 東北経産局が20年夏に東北4県の交付事業者を対象にしたアンケートで、売り上げが震災前の水準まで回復したのは44・0%、雇用では55・5%だった。いずれも前年から微減し、頭打ちの状態にあるという。

 売上高を伸ばしたのは復興工事の恩恵を受けた建設業で、水産加工業や観光業は震災前を下回るなど業種による好不況の差は大きい。苦境を脱するため、競争力の強化につながる追加の一手を官民挙げて考えたい。

 補助金支出の仕組みに関して、グループの位置付けが曖昧だったとの指摘が少なくない。商工会議所が地域の300社以上を束ねて申請したケースや、補助金の確保が目的になり、身の丈を超えた過大な投資を引き起こす面もあった。本来は市場から退出すべきだった企業を「延命」させたとという見方も出ている。

 グループ化補助金は国内で相次ぐ自然災害時の復興支援策として定着した。震災から10年になる今、運用の利点と課題を改めて検証し、次の災害に備えて改善を加える姿勢が欠かせないだろう。

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