<まちかどエッセー・深沢昌夫>弁当男子のひとりごと

深沢昌夫[ふかさわ・まさお]さん 1963年盛岡市生まれ。東北大大学院博士課程中退。98年度歌舞伎学会奨励賞受賞。宮城学院女子大教授。同大学芸学部日本文学科長。専門は古典文学と芸能。著書に『現代に生きる近松-戦後 60年の軌跡』など。仙台市青葉区在住。

 私はいわゆる弁当男子である。わが家にはもともと外食の習慣がなく、以前は家人がもっぱら弁当作りを担当していたが、次第に仕事が忙しくなり、いつしか私が弁当担当になっていた。末っ子が高校生の時分から毎日弁当を作っていたので、かれこれ7、8年になるだろうか。真ん中の娘など彼氏とのデートに弁当を持っていくことになって私に作らせていたし、今は全員家を離れ夫婦二人だけになったが、家人は弁当はもちろん夕食まであてにしている始末である。何にせよ、人に頼られるというのはとても気持ちがいいものだ。私は誰よりも遅く寝て、誰よりも早く起き、目が覚めると同時に弁当を作りはじめる。習慣になってしまえば何ということもない。
 去年、野菜が高騰した。連日の長雨と日照不足、一転して異常なまでの猛暑、おまけに新型コロナウイルスの影響による巣ごもり需要もあいまって、野菜の値段がとんでもないことになっていた。子どもの頃から何はなくとも野菜が大好きだったウサギ年の弁当男子としては、やむなく価格の安定した乾物を使い始めた。要は切り干し大根である。だが、作ってみると、これがうまい。ことのほかうまい。これまで自分で作ったことはなかったが、以来、わが家の弁当には欠かせない定番総菜になり、毎週せっせと切り干し大根を作っている。
 料理を作る時、私は本も見ないし、ネット情報も参照しない。だいたいが適当で、見よう見まねの目分量。材料だって有り合わせで間に合わせることが多い(基本面倒くさがりなのだ)。だが、出汁(だし)はちゃんと取る。あご入りの出汁パックと昆布の合わせ技を使う。とにかく出汁さえ取れば、塩も砂糖もほとんどいらない。あとは野菜からも出汁が出て、うまいし、甘いし、鍋でも煮物でも基本的には出汁だけで十分な気がする。
 日本の伝統的な食文化「和食」がユネスコの無形文化遺産に登録されたのは2013年である。いまや海外でも甘味・酸味・塩味・苦味に次ぐ第五の味覚として「うま味」(海外でもそのままUMAMIとして通用する)の愛好者が増えているという。新型コロナで在宅勤務が増えている昨今、せっかくですから皆で出汁を取って(笑)、何かおいしいものでも食べませんか。(宮城学院女子大教授)

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まちかどエッセー

 仙台・宮城在住の執筆者が、それぞれの活動や暮らしで感じたことをつづります。

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