記者ログ(6/9):詩人の思い出

 南相馬市の詩人若松丈太郎さんが4月に亡くなった。85歳。訃報に接し、東日本大震災直後の2011年5月、取材でご自宅に伺ったときのことを思い出した。
 震災前に若松さんが発表した一編「神隠しされた街」。原発事故で人通りが消えた風景をうたったが、震災はそれを現実化していた。「これは人災であり、企業災害だ」。穏やかな口調に、国や東京電力への怒りがにじんでいた。
 原子力行政への批判は痛烈ながら、人柄は温和だった。当時、妻子を避難させ取材を続ける自分の身を気遣ってくれもした。放射性物質の影響より、孫に会えなくてつらいとこぼすその表情は、どこにでもいるおじいちゃんだった。
 若松さんは今後も南相馬で復興を見届けたいと語っていた。荒れ地に除染廃棄物のフレコンバッグが積み上がる浜通りを、五輪の聖火が走り抜けた薄ら寒い光景を、どう感じていただろうか。合掌。(整理部・加藤敦)

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