河北春秋(6/10):石巻市のギャラリー、アートドラッグセンタ…

 石巻市のギャラリー、アートドラッグセンターで、一風変わった個展が開かれている。暗い部屋の壁に書かれているのは短歌。スポットライトの光が当たると作品が見え、光が消えると見えなくなる。男女の短歌の朗読と波音が聞こえる。目と耳を刺激する空間だ▼<まだ割れることを知らない空中の瓶だよ僕らの今は例えば><開けっ放しのペットボトルを投げ渡し飛び散れたてがみのように水たち>。青春の日々を詠んだのだろうか。みずみずしい歌が並ぶ▼展示したのは石巻市の歌人近江瞬さん(32)。昨年、全国結社「塔短歌会」の塔短歌会賞を受賞して注目され、地元ではカプカプという短歌集団をつくって活動する▼創作のテーマは日常。「失われるからこそ、今が素晴らしい」。そんな思いを五七五七七の「小さな箱」で表現する。短歌の魅力を若い世代に知ってもらおうと、個展では言葉が心に深く染み込んでいく空間を目指した▼27日まで土日に開催。新作も展示する。<両の手で指折り十を数え終え指開きその先も数える>。今年3月11日午後2時46分、農道に車を止めて黙とうした後に詠んだ。東日本大震災は10年を数えても終わりではなく、ずっと続くという思いを込めた。今後も被災地で短歌の可能性を追求していくつもりだ。(2021・6・10)

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