<東北の本棚>1億総特攻の狂気検証

国民義勇戦闘隊と学徒隊/斉藤 利彦 著

 「あの沖縄戦と同じように、すべての老若男女を巻き込んだ『決戦』が、本土において戦われようとしていたことを、私たちはどれだけ正確に認識しているだろうか」

 本書はこんな問い掛けで始まる。太平洋戦争末期、本土決戦に備えて女性や少年を含めた一般国民が戦闘員として組織された「国民義勇戦闘隊」。関連資料は終戦と同時に焼却命令が出され、隠蔽(いんぺい)された。著者は焼かれずに残った資料などを基にその実態に迫り、国上層部が本気で「一億総特攻」に突き進んでいたことを示す。

 本書によると、国民義勇戦闘隊は、1945年3月に閣議決定された国民義勇隊を母体としている。国民義勇隊は本土防衛に向け労役が課され、学校単位の学徒隊も包含した。同年6月には、義勇兵役法が公布され、15~60歳の男性、17~40歳の女性を国民義勇戦闘隊に組み入れることができるようになった。対象は当時の全人口約7200万人のうち約2800万人にも及んだ。

 国民義勇戦闘隊の戦闘方法を具体的に書いた項は、国民の命が軽んじられた当時の狂気を伝える。大本営陸軍部は、戦闘マニュアルと言える「国民抗戦必携」を刊行している。その中の「対戦車肉薄攻撃」の章では、火炎瓶などを使った戦闘だけでなく、爆雷を抱えて飛び込むのも適切な攻撃法として挙げている。

 樺太(現ロシア・サハリン)では、ソ連兵と実際の戦闘が行われ、国民義勇戦闘隊に多数の死傷者が出た。軍の支援をほとんど受けられなかった彼らが手にしていたのは、竹やりや鎌などだった。終戦が遅れていたら、本土でどんなことが起きたか。想像するだけで戦りつする。

 著者は53年いわき市生まれ、東京大大学院教育学研究科博士課程修了。学習院大文学部教育学科教授。専門は日本近代教育史など。(安)

 朝日新聞出版03(5540)7793=1650円。

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