社説(10/24):’21衆院選 「トラベル」再開/広く長く効果生む仕組みに

 新型コロナウイルス感染症の広がりが沈静化し、政府の観光支援事業「Go To トラベル」を再開させる動きが出ている。昨年7月に始まったキャンペーンは12月、感染再拡大で停止を余儀なくされた。利用できた人と、そうでない人で不公平感も漂った。しっかりとした制度設計の下、慎重に臨むべきだ。

 まず、事業の目的や枠組みを整理しておきたい。公式サイトによれば、新型コロナの流行で失われた観光客の流れを取り戻し、観光地全体の消費を促すことで深刻な状況に陥った地域経済に波及効果をもたらす-とされている。

 国内旅行代金の2分の1を国が支援する事業は、二つの柱がある。給付金による旅行・宿泊の35%引きと、旅行先の土産物店、飲食店、観光施設などで使える15%相当額の地域共通クーポンの付与だ。

 支援額の上限は1人当たり日帰りは1万円、1泊は2万円で、1回につき7泊分までが対象。回数の制限はない。

 一見すると、立て付けはよくできている。しかし、事業を利用したのは主に時間、金銭面で余裕がある人だったのは確かだ。高級ホテル・旅館は給付金による割安感から人気を集める一方、低価格帯の宿泊施設は思うように集客できなかった実態も浮かんだ。

 全国知事会は、緊急事態宣言とまん延防止等重点措置の全面解除を受けて提言をまとめた。事業再開の際は感染状況をはじめとした地域の実情を踏まえ、各都道府県と情報を共有して適切に運用するよう要請。事業の恩恵にあずかれない小規模の宿泊業や旅行代理店、土産物店などへのきめ細かな支援も求めた。

 需要喚起策「Go To キャンペーン」に前のめりになり感染再拡大後も事業停止に踏み切れなかった菅義偉前首相の姿勢、制度設計の欠陥を教訓にしてのことだろう。

 観光庁は13日、「Go To トラベル」再開に向けてワクチンの接種済証や検査の陰性証明を使う宿泊旅行の実証実験を行うと発表した。「安全安心の確保を前提とした仕組みに抜本的に見直す」(岸田文雄首相)ためだ。

 コロナ禍でインバウンド(訪日外国人旅行者)の取り込みがままならない今、観光産業への公的支援が必要なことは論をまたない。ただ、度重なる緊急事態宣言の延長で「巣ごもり」期間が長かっただけに、観光旅行の需要は大きい。だからこそ、やみくもに巨額の税金を充当することにはためらいを覚える。

 野党第1党の立憲民主党は、観光関連事業者を対象にした新たな給付金の創設などの緊急支援策を打ち出す。新型コロナ対策の核となる喫緊の課題であり、自民党との対立軸には成り得る。

 いずれにしても、衆院選を前にした人気取りのための大盤振る舞いは禍根を残す。事業の効果を広く、長く行き渡らせる仕掛けが必要だ。

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