社説(11/25):HPVワクチン接種/丁寧な説明と環境整備を

 子宮頸(けい)がんなどの原因となるヒトパピローマウイルス(HPV)の感染を防ぐワクチンについて、厚生労働省が積極的な接種勧奨の再開を決めた。接種後に全身の痛みやしびれなどの症状を訴える人が相次いだため、2013年から中止していた。

 新型コロナウイルスでも見られたように、ワクチンの副反応に不安を抱く人はいる。HPVワクチンの健康被害を巡っては、国とワクチンの製薬会社2社に対して損害賠償を求める訴訟が続いている。

 厚労省は症状が出た人の相談体制を強化するなどした上で、来年度にも積極的勧奨を再開する。中止期間に機会を逃した女性に対しても、対象者と同様、無料で接種できるようにする方針だ。

 再開に当たっては、接種を受けるかどうかの判断材料として、ワクチンの有効性や副反応などのリスクに関して丁寧な説明が必要だ。症状が出た人が適切な医療を受けられる環境整備も求められる。心身の重い症状に苦しむ人への支援強化も欠かせない。

 子宮の入り口にできる子宮頸がんは性交渉によるHPVの感染が原因となる。多くは自然に消えるが、感染が長期化すると病変が進み、がん化する。20~39歳の女性がかかるがんでは乳がんに次いで多く、年間1万1000人。2800人が亡くなっている。

 日本では13年に12~16歳の女子を対象に定期接種化されたが、2カ月後に定期接種対象のまま積極的勧奨を中止した。70%以上あった接種率は一時1%未満まで激減した。

 今回の方針転換は、子宮頸がんの予防につながったとする追跡調査が進み、ワクチンの有効性を示すデータが出てきたことが大きい。

 昨年、167万人の女性を対象にしたスウェーデンの調査では、17歳よりも前に接種を受けた女性は、受けていない人よりも発症リスクが88%低かった。

 痛みなどの副反応と疑われる症状に関して、厚労省の専門部会は、ワクチン接種との関連性は明らかになっていないとし、「安全性について特段の懸念は認められない」と評価した。

 ただ、一方で、全身の痛みや記憶障害などの重い症状を訴えるケースもある。同省によると、接種者1万人当たり5人いる。

 保護者のワクチンへの抵抗感も根強い。ワクチン接種を推進する医師らでつくる「みんパピ!」が高校1年生とその保護者にアンケートしたところ、高校生は「接種したい」と「接種したいと思わない」がどちらも約3割だったのに対し、保護者はそれぞれ約13%と約51%だった。保護者の理解を得ることにも力を入れるべきだろう。

 子宮頸がん対策では、検診も重要だ。20歳以降に行われる検診を受けてもらうための情報発信も強化し、早期発見、早期治療につなげたい。

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