視覚と嗅覚で楽しもう 【特集】梅
「古来花見は梅が主役」
仙台市緑の相談所(仙台市泉区)の 園芸相談員佐藤権一さんに、梅の歴史や種類、観賞のポイントを教えてもらいました。
梅は中国原産の歴史ある花です。元号の「令和」の由来となった万葉集の梅花の歌のように、平安時代までには多くの歌に詠まれました。1598年に豊臣秀吉が桜で「醍醐の花見」を開くまで、日本人は梅に春を感じたようです。
<ポピュラーな野梅系>
数千もあるとされる種類は3つに大別でき、最も一般的なのが中国原産品種の子孫の野梅系。白い花で、実はよく梅干しに使われます。緋梅系は野梅系から変化し、花は桃色や薄紅色。豊後系はアンズとの交雑種で桃色の花です。黄色く、強い香りの花を咲かせる蝋梅は、梅と違う種類です。
<視覚と嗅覚で楽しむ>
ぷっくりと膨らみ、花びらの色が少し見えるつぼみから絵になります。開花後のかれんな姿もいいですね。太さや曲がり方などが表情豊かな枝にもぜひ注目を。甘い香りが漂い、視覚と嗅覚で楽しめます。
見頃は2~3週間と長いので、盆栽や生け花にもお勧めです。
宮城県内では臥龍梅が有名です。まるで竜が地面をはうような形状に枝や幹が成長することから命名されました。伊達政宗が1592~93年の朝鮮出兵(文禄の役)から持ち帰った朝鮮ウメを若林城(現若林区・宮城刑務所)に1629年に移植し、そこから枝分かれした木が各地に残ります。伊達家由来の梅には、松島町・瑞巌寺の臥龍梅や若林区・せんだい農業園芸センターの梅園もあります。
臥龍梅
若林城の木の子孫だったり、伊達家の重臣の屋敷に植えられたりした臥龍梅。樹齢数百年の古木もありますが、各地で大切に手入れされ、きれいな花を咲かせます。

若林城(現宮城刑務所)
※一般の見学は不可
仙台市若林区古城2-3-1
TEL022-286-3111
瑞鳳殿
仙台市青葉区霊屋下23-2
営/9:00~16:50(最終入館16:30)
休/無休
観覧料/大学生以上570円、高校生410円、小・中学生210円
TEL022-262-6250
「伝統の味を守りたい」 梅干しマイスター 角田市・佐藤きい子さん
花だけでなく、実も楽しみたい̶。梅花の里の角田市に、おいしい梅干しがあると聞き、編集部がGO。梅干し作り40年以上の佐藤きい子さん(86)一家を取材しました。

きい子さんは、日本特産農産物協会の「地域特産物マイスター」に梅干しで初めて認定された「梅干しマイスター」。もともと自家用に作っており、1980年代に市内の農家でつくる角田梅干部会に入り、本格的な生産を始めた。
「酸っぱくてしょっぱく、真っ赤なのが角田の梅干し」ときい子さん。使うのは角田産梅(主に自家製)、シソ、天然塩だけ。ふっくらして香りが立ち、ご飯がぐんぐん進む。「理想の味にやっと出会えた」と遠くから手紙を送ってくれるファンもいる。
きい子さんは屋号から名を取った「八神農産加工所」で、息子の修一さん(62)、義理の娘久美子さん(62)とともに年間約4~5tを生産する。収穫から選別、塩漬け、天日干し、漬け込みまで、全て手作業。真夏に3日間行う天日干しは、一つ一つ乾き具合を見極めながら行う。半年かけて漬かった梅干しは17%前後の塩分で、きい子さん、久美子さんの厳しいチェックを経て出荷される。
2011年に加工所作業を代替わりした久美子さん。「蜂蜜漬けや減塩の梅干しが世の中にあるが、昔ながらの味を守りたい」。きい子さんの味は「久美子さんの梅干し」にしっかり受け継がれている。


産直広場あぐりっと
(250g入り500円などで販売)
角田市毛萱舘下11-4
営/9:00~17:00
休/不定休
TEL0224-65-3887
(河北ウイークリーせんだい 2022年2月10日号掲載)