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観賞記>市民参加、震災伝承舞台「いのちのかたりつぎ」

俳優の芝原(右)と子どもたちが共演した第2話「子どもの星」
5人の俳優たちによる第5話「Fukushima Voice」。熱唱するSAKUYA(右から2人目)、中央は大橋

 東日本大震災などから題材を取った舞台「いのちのかたりつぎ」から伝わってきたのは命の尊さ、自然災害の恐ろしさを語り継いでいかなければならない-という強い使命感だった。

 俳優だけで演じた昨年と違い、今年はワークショップを経て子どもや市民有志が14人参加した。全5話のうち前半の三つの話(やちたび、子どもの星、雪姫の伝説)に出演し、歌やダンスを織り交ぜた震災伝承舞台を5人の俳優たちと力を合わせて創った。市民参加型にしたことによって観客はより身近に震災を感じたはずだ。

 あれから11年になろうとしている。震災の記憶、教訓を風化させないためにも市民が関わっていく場として演劇が果たす役割は、小さくないことを再認識させられた。

 震災後に生まれた子どもの参加も意義深かった。役を通して震災を知る貴重な体験になったに違いない。実際、第2話「子どもの星」は、震災時に石巻の子どもたちが体験した出来事をベースに創られた。

 5人の俳優たちも被災地で活動するアーティストとしての自負がみなぎっていた。石巻市出身の芝原弘、大橋奈央は昨年に続いて出演。新たに東松島市出身のシンガー・ソングライターSAKUYAが加わった。

 福島県出身の詩人和合亮一の詩を基にした第5話「Fukushima Voice」では、SAKUYAが「早春賦」「朧月(おぼろづき)夜」を熱唱。ほかの4人の力強い舞とともに古里への思い、心の叫び、慟哭(どうこく)を表現した。震災伝承舞台にかける俳優たちの熱い思いは客席にしっかり届いた。

 約1時間10分の舞台は、生かされた者たちへのメッセージでもあった。死者が生者に寄り添い支えていた(第4話「渚にて あの日からの<みちのく怪談>」より「水辺のふたり」)。

 最後に観客が受け取ったのは「希望に生きる」である。仙台市から訪れた主婦小野律子さん(73)は「芝居にして語り継いでいく試みは大切」と話した。(久)

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 「いのちのかたりつぎ」は6日、石巻市河北総合センターで上演された。ほかに俳優の本田椋、渡邉悠生が出演。演出は石巻市在住の都甲マリ子。三陸まちづくりART(大船渡市)主催。

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