<東北の本棚>封建制の崩壊浮き彫り

家中・足軽の幕末変革記 支倉 清、支倉紀代美 著

 仙台藩の下級武士が残した江戸時代の農村の記録を掘り起こした。1830年代の天保の大飢饉(ききん)で打撃を受けた貧しい農民は土地を手放して借金を整理するしかなくなり、富裕農民への土地集中が加速した。封建社会の身分秩序が底辺から崩壊するさまを浮き彫りにした労作だ。

 現在の石巻市前谷地を中心に617石の知行地を与えられた仙台藩士山岸家が1800年から62年分、12人の家中の人事や給与などを記録した「山岸氏御用留」を解析した。仙台藩の直臣約1万人に対し、直臣に仕える家中、足軽は約2万4000人。家中は農民とほぼ同一状態だった。

 御用留が書き始められたのは、仙台藩北部で起きた寛政の大一揆(1797年)直後。藩は財政赤字補填(ほてん)のため、米を安値で強制的に買い付けて江戸で売りさばく買米制を取り、農民が疲弊した。現場では検地帳に基づき年貢を徴収することが困難になり、農民の中から選んだ地肝入に年貢の徴収を委託した。農民からは「家財を売り払って弟を身売りし、自分も手間取り稼ぎに出て借金を返済する」などと窮状を訴え、年貢率の軽減や手当の支給を求める書類が御用留に残されている。

 算術に優れ、足軽から家老に出世して財務の実権を握る人物が登場し、家柄から能力主義へと人事が変化していく。飢饉で荒廃した農村の復興に尽力した家中も家格が低かった。地肝入が武家の金を用立てて武家が頭が上がらなくなるなど、士農工商の関係が逆転する様子も興味深い。

 支倉家の血を引く郷土史愛好家支倉清さんと古文書に詳しい妻紀代美さんの共著で、「代官の判決をひっくり返した百姓たち」「下級武士の田舎暮らし日記」に続く第3弾。(会)

 築地書館03(3542)3731=2640円。

関連タグ

河北新報のメルマガ登録はこちら
東北の本棚

「東北の本棚」は、地元にゆかりの深い著者の本、東北を舞台にした本などを紹介するコーナーです。小説、評論、ルポルタージュ、写真集、絵本など、さまざまな本を厳選して生活文化部の記者が紹介します。

企画特集

先頭に戻る