衆院10増10減実現へ 地方の声聴き不断の改革を 社説(5/22)

 衆院選の「1票の格差」を是正するための小選挙区定数「10増10減」は、衆院選挙区画審議会(区割り審)が新たな線引きを勧告する6月25日まで約1カ月となった。

 宮城、福島など10県が1減、首都圏4都県と愛知県は10増となる。選挙区の境界変更はこの15都県に加え、2020年国勢調査などで1票の格差が2倍以上の選挙区がある北海道、大阪府、兵庫、福岡両県が対象となる見込みだ。

 境界が変わる選挙区の数は、17年勧告の「0増6減」時の97を上回るとみられる。都道府県は線引きについて、地域の一体性を尊重し、市区町村の分割を避けることを要請している。区割り審は、一つの市区町村が複数の選挙区に分かれているケースを解消できないかどうか洗い出しを進めているという。

 作業に当たっては、基本方針に据えた行政区画や地域のつながりへの配慮を徹底することを求めたい。具体的な線引きは難しい判断になるだろうが、市区町村の分割や飛び地は極力、避けるべきだ。

 議席が減る県には、地方の声が国政に届かなくなるとの危惧も広がる。定数が6から5となる宮城県の村井嘉浩知事は、東日本大震災からの復興途上にある沿岸部への配慮に加え、議席配分方式の妥当性の検討を求めている。

 議席が5から4に減る福島県の内堀雅雄知事も震災と東京電力福島第1原発事故で、被災者が県内外に避難していることを指摘。人口が流動的で不安定な特殊事情を考慮する必要性を挙げた。こうした懸念は理解できる。

 一方で10増10減は、法の下の平等を定める憲法との整合性を取るための措置だ。算定に当たっては、人口が少ない県でも最低1議席は割り振られ、過疎地に最大限配慮した「アダムズ方式」を自民党主導で導入した経緯がある。

 地方の定数減には自民党内から反対する動きも出た。これは議席を独占する県があり、候補者調整が難しくなるとの事情がある。党利党略としか映らず、10増10減を覆す理由にはなり得ない。

 そもそも憲法は国会議員を全国民の代表と定めており、全ての地域の代表でもある。地方の意見を国政に反映させるのは、政策実現を目指す政党でも取り組めるはずだ。

 まずは1票の格差是正のため、地方の意見を踏まえた慎重な区割りによる10増10減の実現が必要だろう。その上で、地方の実情に精通した代表を国会に送る重要性に関する議論が欠かせない。

 アダムズ方式は人口が少ない地域に配慮されているが、人口比だけの配分では地方に不満が募り続け、一定の限界も指摘されている。

 憲法が求める投票価値の平等と地方が抱く問題意識との乖離(かいり)に、どう対処していくのか。棚上げは許されない。国会は不断の改革を進める覚悟を示すべきである。

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