河北春秋(6/14):青森県大間町を舞台にした吉村昭さんの小説…

 青森県大間町を舞台にした吉村昭さんの小説『魚影の群れ』から。「辛抱しろ。マグロとりは、たとえどんなことがあってもかかったマグロは追いつづけるんだ」。同船した娘の恋人が釣り糸でけがをしても、主人公の漁師が構わずマグロを追ったときの場面だ▼随分前、同県深浦町を拠点とする定置網漁船に乗せてもらったことがある。出港すると、視線の先には世界遺産白神山地があった。網には、たくさんのクロマグロやブリ。豊かな漁場に感動した。小説同様、漁師が命懸けで魚を取っていることも知り、丁寧に食べるようになった▼先ごろ公表された水産白書によると、2020年度の日本の1人当たりの魚介類消費量は23・4キロ。ピークだった01年度の6割弱しかなく、比較可能な1960年度以降で最低だった。魚食文化を守ろうと奮闘している人々には悲しいニュース▼新型コロナウイルス禍で外食の消費額が減ったという。振り返れば、仲間と連れ立って居酒屋に行き、魚料理を堪能する機会がほとんどない年度ではあった▼先日、池波正太郎さんの小説に登場するカツオ飯をまねて作ってみた。身を湯がき、冷まして布巾に包んで丁寧にもみほぐす。ネギを薬味に濃い汁をかける。うまかった。魚好きのせめてもの罪滅ぼしが続く。(2022・6・14)

関連タグ

河北新報のメルマガ登録はこちら

企画特集

先頭に戻る