山形特産品、新幹線で東京へ 新トンネル整備へ機運醸成

 山形県が、山形新幹線を活用した県産品の荷物輸送に力を入れている。トラックに比べてわずかしか運べないが、県は首都圏までの輸送時間短縮に加え、特産品を通して山形の魅力を発信する効果にも期待を寄せる。人と物の流れを活発にして、新型コロナウイルス禍で落ち込んだ需要の回復につなげ、さらには新幹線の機能強化に不可欠な新トンネル整備に向けた機運を醸成しようとしている。(山形総局・原口靖志)

輸送量は「PR料」 県が全額補助

 6月19日朝のJR山形駅。駅員が、東根市で収穫された高級サクランボ「佐藤錦」約50キロを午前7時8分発のつばさ124号に積み込んだ。トラックなら一晩かかる輸送時間を大幅に短縮。東京駅到着後、すぐに日本橋のデパートで販売した。

 出荷した全農山形県本部の担当者は「サクランボは新鮮さが命の果物で、収穫して2日たつと劣化が始まる。新幹線は有効な手段だ」と効果を実感。県総合交通政策課の大内皓介課長は「新鮮な果物を手に取って山形の魅力を知ってもらい、旅行先に選ばれるきっかけになれば」と話した。

 県はコロナ禍の2020年11月にJR東日本と連携し、山形新幹線を積極活用する。輸送料は「メディアで報じられるPR料」と割り切り、県が全額を補助。ラ・フランスやサクランボなどの農産物や海産物以外にも、望遠レンズなどの精密機械部品を運ぶ。

 1992年に開業した山形新幹線は7月に30周年を迎える。奥羽線の在来区間を標準軌化したミニ新幹線で、山岳区間の福島-米沢間は雪や雨による運休や遅延がたびたび生じて定時運行のネックとなる。

 輸送障害の解消に向け、JR東が検討するのが全長23キロの新トンネルの整備。13分程度の時間短縮が見込まれるが、概算事業費は試算で1500億円と膨大で、県に事業化への支援を要請する。両者は今年3月、ルートの共同調査に着手した。

 しかし、現段階では整備促進する「説得力」に欠ける。JR東によると、山形新幹線を含む奥羽線福島-米沢間の1日当たりの平均通過人員は19年度の8985人から20年度は2701人に減った。

 そこで期待されているのが物の輸送だ。JR東は17年に新幹線などを活用した荷物輸送(現名称「はこビュン」)を開始した。生鮮品を扱う事業者や地産品のPRを望む自治体からの引き合いがあり、輸送件数は増加傾向にあるという。

 県総合交通政策課米沢トンネル(仮称)事業化・沿線活性化推進室の今野猛室長補佐は「トンネル整備の効果を高めるには人と物の流れを活発にする必要がある」と強調。コロナ後の旅客人員の回復に加え、新たなニーズとして荷物輸送の需要を掘り起こし、整備のメリットを強くアピールしたい考えだ。

 JR東日本仙台支社の担当者も「『はこビュン』を使ってもらうことで事業の認知度向上に期待するとともに、山形の商材の販路拡大にも結び付けたい」と話した。

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