「障害者の自立」理念貫く 仙台・いずみ高等支援学校創立60年 全国唯一、私立で女子のみ

 仙台市宮城野区安養寺の「いずみ高等支援学校」が今年創立60周年を迎えた。全国唯一の私立女子校の特別支援学校として、知的障害のある生徒の自立を目指した教育を実践してきた。これまでの卒業・修了生は計1636人。今も全国から生徒が集まる。中学卒業後の進路が限られていた時代から歴史を重ね、挑戦を続ける教育現場を訪ねた。(生活文化部・菊池春子)

実習の一環で、教員らの弁当作りに取り組む生徒たち=いずみ高等支援学校

洋裁学校が原点、実習充実

 6月下旬、鉄筋2階の特別教室棟1階にある調理室。専攻科調理コースの生徒たちが真剣な表情で野菜などを炒めていた。パプリカのソテーを作っていた1年の生徒(18)が「小さく切るのが難しかった。将来は調理関係の仕事をしたい」と笑顔で話した。

 生徒らは週1回、教員らから弁当の注文を取って調理して届ける。代金の受け取りも行う。「学習即生活・生活即学習」を理念とする教育の一環だという。

 同校は洋裁学校が原点で幅広い実習が特色だ。3年間の本科卒業後、専門的な職業訓練を行う専攻科(2年)を備える。

 伊藤徳子校長らの案内で校舎を回ると、フランス刺しゅうを施した小物などが随所に飾られている。生徒の作品という。実習の成果を肌で感じる。

 「女子のみの環境で、落ち着いて学べると感じる生徒も少なくない」と伊藤校長。現在の進路は飲食、清掃関係など一般就労も多く、5年定着率は90%以上という。

 生徒会長の専攻科1年岩渕星花さん(18)は、クリーニング業界への就職を考えているという。「自分から行動する力を付けることが目標。伝統を受け継ぎ、明るく元気な学校にしたい」と力強く語ってくれた。

生徒らが、刺しゅうの作品制作に集中して取り組んでいた

全国から入学者、卒業後も伴走

 共同生活による自立を目指した寄宿舎も近くに備える。宮城県内のほか東北各県や関東など、全国から教育内容に賛同した入学者が集まる。

 「寄宿舎や学校での経験を生かし、帰省時に食事の準備もするようになった」。PTA会長藤原淳哉さん(55)=岩手県奥州市=は、専攻科1年で学ぶ長女悠(はるか)さん(18)の成長を実感している。

 同校によると、異動がないこともあり、教職員は卒業生らとのつながりが強いという。卒業後5年間は学校が就労状況などをフォローし、その後も相談に応じる態勢を取る。

 1994年に専攻科を修了した泉区の村井由紀さん(48)は、市内のクリーニング工場に就職し、勤続28年。職場の上司のほか、学校のサポートも大きかったと感じているという。「仕事で苦労したり悩んだりした時は、学校に電話をして先生に励ましてもらった」。同窓会「明和会」の会長として、社会に出る後輩たちを見守る。

 一定規模以上の企業に障害者雇用が義務付けられるなど社会環境は変化したが、就職先や実習先の開拓は今も課題だという。「障害者の受け入れに戸惑う企業は少なくない。多くの企業に生徒を送り出し、理解を広げたい」と阿部和治教頭。障害者の社会参加という創立以来の目標に向け、歩みを続ける。

製品に付けるラベルを作る生徒たち

父母らの要望受け、仙台の夫妻が開設

 いずみ高等支援学校は1962年、知的障害のある女子の父母らの要望を受け、仙台市青葉区で洋裁学校「明和女学院」を運営していた田山彦六さん、仁子さん夫妻(いずれも故人)が、学院敷地内に「いずみ養護学校」として設立した。校名には「湧き出る泉のように愛を注ぐ」との思いが込められている。

 知的障害児の高等部としては宮城県内では初の施設。遠藤正敬理事長は「中学卒業後は家事手伝いという例が大半だった時代。先駆的だった」と話す。69年に専攻科を開設し、74年に現在地に移転した。2012年に現在の校名となった。

 22年7月現在、本科に65人、専攻科に32人が在籍する。専攻科は清掃、縫製、調理、福祉・介護、農園芸の5コース。宮城県外出身者7人を含む計28人が寄宿舎を利用している。

いずみ高等支援学校の校舎。さまざまな実習設備などを備える
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