広島原爆の日 被爆国の決意、今こそ世界へ 社説(8/6)

 核を巡り、世界は激しく揺すぶられている。

 77年前のきょう、広島に原爆が落とされた。3日後、長崎でもさく裂した。日常を破壊し、焼き尽くす核兵器。その脅威が再び視野に入り、国際社会の視界を曇らせる。

 日本は唯一の戦争被爆国として「核兵器のない世界」の実現を唱えてきた。今年2月、無力感にさいなまれる突発事態が降りかかった。ロシアがウクライナに侵攻し、原発に砲弾を撃ち込んだ。核の使用をもちらつかせ、西側諸国を威嚇している。

 安全保障環境が急激に悪化し、過酷な「現実」を見せ付ける。「核なき世界」という「理想」が一層、遠のいたと言わざるを得ない緊急事態が目の前にある。

 核拡散防止条約(NPT)再検討会議は今月、図らずも最悪の国際情勢の中で開幕した。核大国が一触即発状態にある。危機感を共有し、核使用のリスク排除へ突破口を見いださなければ、今開催する意味がない。

 岸田文雄首相は日本の首相として初めて出席し、核なき世界を目指す行動計画「ヒロシマ・アクション・プラン」を提案した。核兵器不使用の継続と核戦力の透明性向上などのほか、被爆実態の正しい認識を世界に広げる仕組みの構築を訴えた。

 いずれも重要なテーマだが、従来の取り組みにとどまり、新味はない。岸田首相は被爆地の広島出身を意識し、核保有国と非保有国の橋渡し役を自任するが、演説内容は広島、長崎の被爆者には物足りないと映った。

 核兵器の開発から保有まで全て違法とした核兵器禁止条約に一切言及しなかったからだ。被爆者は条約の成立に大きく貢献したが、日本は加盟していない。6月の締約国初会合にオブザーバー参加すらしなかった。

 米国の「核の傘」に依存する以上、米国をはじめ、核保有国が反発する核禁条約に賛同するわけにはいかないというのが日本の立場だ。

 核禁条約の締約国会議には、欧米の核同盟である北大西洋条約機構(NATO)加盟国のドイツやノルウェーなど4カ国と米同盟国のオーストラリアもオブザーバー参加した。核のない世界という理想に近づけるため、締約国と対話を重ねることを重視した。

 一方、出席しなかった日本に対し、落胆の声が上がった。日本の対応は核廃絶への熱意が伝わらず、「二枚舌外交」と取られかねない。

 広島では11月に各国の政治指導者らが核軍縮の方策を話し合う「国際賢人会議」が開かれる。創設者は岸田首相だ。日本の存在感を示す貪欲な姿勢を求めたい。

 被爆の実相を知る国だからこそ、核のない恒久平和への訴えに実感が伴う。「ノー・モア・ヒロシマ、ナガサキ」。悲痛な叫びをお題目にしてはならない。

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