<創作現場/私の相棒>「墨とカラーインク」 書と絵を融合、感情表現

 画家の絵筆やペインティングナイフ、小説家の万年筆、声楽家ののどあめ…。創作・表現活動に携わる人は、活動に欠くことのできない愛用の道具、いわば「相棒」を必ず伴っています。宮城県内の創作・表現者を訪ねて、作品論や創作上の苦労話などを紹介しながら「相棒」に寄せる思いを聞きました。

作品「春待つ鳥」を手にする丹野さん。ジャンルを聞かれるが、「書と絵は一体」と言う

書画家・丹野萩逕さん

 鳥がたたずむ水辺の風景を、墨と控えめな青色で風雅に描く。飛行する鳥の群れは、崩した字の連なりだ。宮城県塩釜市の書画家丹野萩逕(しゅうけい)さん(49)の今春の新作「春待つ鳥」。他作品も涙の文字に潤んだ目を重ねたり、墨痕とインクで花を表したり。書か美術か、垣根を越えた画面が書の先入観を変えてくれる。

 書を5歳から習う一方、絵やイラストを描くのが好きで、東北生活文化大で美術を学んだ。ただ、しっかりした伝統と形式を持つ書と、自由な創作であるアートは別々のものと考えていた。

 30歳ごろ、書の師である支部蘭蹊(はせべらんけい)さん(仙台市)に「自由に書くとよい」と励まされ、書と絵を融合し始めた。「どちらかに偏らずに表現できるようになった」と喜ぶ。

 創作の相棒は墨とカラーインクだ。「墨に五彩あり」と言われ、菜種油など植物油ですすを取る茶墨、松の木片を燃焼させて青みを帯びた青墨などがある。墨の種類と濃淡で立体的に表現する。

 インクは英国のウィンザー&ニュートン社製。色鮮やかで、世界中のイラストレーターやデザイナーに愛用される品だ。板に描くときはアクリル絵の具を使用し、墨のすすと混ぜることもある。

 書を書き上げるのは一瞬。絵は時間をかけて描く。表現手法の違いは少なくないが、双方を重ねた「映像に近い」イメージが頭に浮かぶという。そこからヘルマン・ヘッセの詩を、いばらの枝の印象で書いた近代詩文の書などが生まれるようになった。

 産経国際書展に出品を続けながら、東京やパリのギャラリーのグループ展などに参加し、活躍の幅を広げる。「上手下手でなく、感情を表現でき、雰囲気の伝わる作品を目指したい」。書の深みも、絵の広がりも、進化が楽しみな作家だ。(生活文化部・会田正宣)

丹野さんが愛用する青墨とカラーインク

[メモ]ウィンザー&ニュートン社は化学者とアーティストが1832年に創業した画材メーカー。丹野さんと書家斉藤文春さんが指導する塩釜市杉村惇美術館の講座「遊字画」は9~12月に秋学期を開講。連絡先は美術館022(362)2555。

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