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<311むすび塾>防災 日常の延長に@311メディアネット/第100回(上)

伝承や活動活性化を意見交換

ワークショップを終えて、オンラインの中継画面に誓いの言葉を掲げる参加者

 河北新報社など全国の地方紙、放送局でつくる「311メディアネット」は2021年2月13日、防災ワークショップ「むすび塾」を、初めてオンラインで各地をつないで開催した。東日本大震災の津波で児童74人、教職員10人が犠牲になった宮城県石巻市の旧大川小から20代の語り部が中継で活動を報告したほか、各地で防災活動に取り組む10~30代の11人が、次世代への災害伝承や防災活動の活性化をテーマに意見を交わした。むすび塾は100回目の節目の開催となった。

 大川小卒業生の東北福祉大4年永沼悠斗さん(26)が語り部を務め、楽しかった学校の思い出や津波で弟、祖母、曽祖母を亡くしたことなどを振り返った。

 震災2日前の前震に触れ「大切な人の命を守るため2日間でできることがあったはずだ。それが語り部活動の原点になっている」と話し、各地で想定される巨大災害への備えを促した。

 意見交換で、宮城県女川町で教育支援に携わるNPO法人カタリバ(東京)の芳岡孝将さん(36)は「先輩世代と違い、今の中学生は震災発生時、どこにどう避難したのかほとんど覚えていない」と被災地の現状を説明した。

 福井高専専攻科1年の水島美咲さん(21)は、到達時間の短い日本海側の津波を懸念。高齢者が玄関先まで移動することで安否確認と津波避難を一度に行う避難訓練などの事例が示されると、メモをした。

 防災の堅いイメージの払拭(ふっしょく)が、参加者共通の課題だった。神奈川県内で活動する「3・11つなぐっぺし」高校生代表の井ノ上敦也さん(17)は音楽、遠足、食の要素を取り入れた防災イベントを紹介した。

 関西大高等部(大阪府高槻市)2年の坂本紫音さん(17)は「防災を日常の延長と考えてはどうか」と提案。高知大2年の佐野太亮さん(20)は、サークルで「一日車中泊」などの体験ルポを情報発信している活動を報告した。

 「東日本の被災地から遠く、地域の人が震災を自分事として捉えにくい」。宮崎大4年の白石麻緒さん(22)が悩みを明かすと、参加者からは避難所運営を切り口に震災を疑似体験するアイデアなどが出された。

 龍谷大(京都市)4年の川村有希さん(22)は就職後も被災地への支援活動が続けられるか、不安を抱えていた。助言者として減災・復興支援機構(東京)の木村拓郎理事長、宮下加奈専務理事も参加。宮下さんは「今回参加した皆さんでインターネットを活用した新しい防災活動の場を作ってみては」と勧めた。

 災害伝承について「災害を経験していない世代も語り継ぐことが大事」と話したのは、神戸市を拠点に活動する「1・17希望の架け橋」代表の藤原祐弥さん(19)。4月から教員になる北海道教育大4年の佐藤愛佳さん(23)は「被災地とつながり、児童が家庭で防災の話をするきっかけを作りたい」と決意を述べた。

 議論の後、東海大付属静岡翔洋高1年の深沢琉華さん(16)は「防災について新聞投稿を続ける」、NPO法人レスキューストックヤード(名古屋市)の森本佳奈さん(38)は「皆さんを東海地域の10代、20代とつなぎたい」と誓った。

 参加者からは、今後の継続的な連携を希望する声が相次いだ。支援機構の木村さんは「定期的にオンラインでむすび塾を開き、被災地や各自の活動について情報交換してはどうか」と提案した。

<311メディアネット>河北新報社が展開する防災の巡回ワークショップ「むすび塾」を共催した全国の地方紙、放送局が参加するネットワーク。共催のつながりを生かし、連携して防災機運を盛り上げるため、東日本大震災の発生日前後に共通タイトルの特集や連載、番組を組む。今年が4回目。

北海道新聞、河北新報、東京新聞、神奈川新聞、福井新聞、静岡新聞、中日新聞、京都新聞、毎日放送、神戸新聞、高知新聞、宮崎日日新聞

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