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<311むすび塾>近所関係大切さ実感/第13回巡回ワークショップ@仙台・長町(下)

家具は倒れ、室内に物が散乱…助け合い復旧

家具や棚が倒れ、室内に物が散乱した畑中さんの自宅=2011年3月13日

 第13回むすび塾は2013年2月16日、仙台市太白区のマンション「ロイヤルシャトー長町」(12階、88戸)で開いた。東日本大震災では揺れで家具などが倒れたほか、停電と断水に見舞われた。マンションの備えはどうあるべきか。減災・復興支援機構(東京)の木村拓郎理事長が進行役を務め、住民ら11人が震災発生当時の様子を振り返りながら意見交換した。

◎3・11そのとき/マンション管理士・畑中泰治さん(67)

<安全な場所を確保>
 震災発生当時は、9階にある自宅のリビングでテーブルに座り、仕事をしていました。テレビで緊急地震速報が流れ、間もなく部屋全体が大きく揺れ始めました。

 「この揺れはまずい」と思い、すぐに近くのソファ周辺に向かいました。家具が倒れても、下敷きにならない安全な場所として、半径1.5メートルほどの空間を確保していたからです。

 揺れが収まってから周囲を見回すと、4LDKの部屋の中は、どこも散乱した物で床が覆われていました。

 ダイニングを見ると、冷蔵庫の扉からは食材や調味料類が飛び出していました。果実酒を漬けていたガラス瓶も砕け散っています。箱に入れてしまっていた年賀状の束、電話機や電話帳、ペン立てに入れていた筆記具なども床の上に散らばり、めちゃくちゃでした。

 木製の本棚は、倒れた衝撃で本体が壊れていました。落ちた数百冊の本の上には植木鉢の破片と土。岩手・宮城内陸地震では倒れなかった背の低い家具も倒れています。1メートル50センチほどの和ダンスは引き出しが飛び出し、中の着物などが室内に散乱していました。

 とてもはだしでは歩けません。片付けの前に、靴を探しました。リビングから玄関に続く廊下も散乱した物であふれていたのですが、慎重に足の踏み場を選んで玄関に向かいました。

<折れたつっかい棒>
 マンション管理の専門家として震災前、何度も防災セミナーを開いてきました。今回の地震は揺れが大き過ぎました。セミナーで紹介してきた対策が、どこまで役に立ったのか…。

 私もさまざまな対策を実践していました。高さ2メートルのダイニングボードの転倒を防ぐため、天井との間につっかい棒を取り付けました。ガラス扉に飛散防止のフィルムを張ったほか、扉に留め金を付けて開かないようにしていました。

 つっかい棒は、揺れで折れてしまったようです。ダイニングボードはテーブルの上に倒れ、中の食器は全て割れてしまいました。

 震災の体験で良かったこともあります。部屋の片付けなどをして生活を取り戻す間、近隣の住民が助け合いました。日ごろから住民同士の付き合いを深めておくことが大切だということを、あらためて感じました。

<専門家から>

■地元町内会とつながりを/減災・復興支援機構理事長 木村拓郎さん

 マンションは災害時、住民にとっての避難所にもなる。防災・減災対策のキーワードとして自助を基本とした「自立と連携」を勧めたい。

 住民はあくまでも自宅かマンション内で生活することを目標にし、マンション全体に関わる課題は全員で対処する。

 マンションの災害対策本部のほかに、フロアごとに防災担当を置き、安否確認や情報の伝達をしてはどうか。

 フロアごとに事情が異なる場合もある。特にエレベーターが止まると高層階の住民は大変だ。住民同士が普段から交流を深め、互いに支援してほしい。

 連携に関し、地元町内会とのつながりをつくることも大切だ。今後は高齢化が進み、マンション住民だけで災害時に動くことは難しくなる。その際、地域の助けが必要になるし、逆に地域を助ける局面も出てくる。

 たくさんの人が住んでいるのだから、さまざまな知識や技術を持っている人がいるはずだ。災害に専門分野で力を発揮してもらうように、事前にリストを作成することもお勧めする。

 さまざまな対策は、できることから入居者全員で始めてもらいたい。一気に全てを実行するのは難しいので、年次計画を立て、段階的に着実に進めてほしい。

<メモ>東日本大震災の教訓を生かすため、河北新報社は地域住民らと一緒に地震・津波に備える巡回ワークショップ「むすび塾」を開いています。名称には、地域と人、人と人のつながりを強め、防災・減災に結び付けていきたいとの思いを込めました。

いのちと地域を守る
わがこと 防災・減災 Wagakoto disaster prevention and reduction

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