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<311次世代塾>マニュアル見直しを/第7期第1、2回

病院、学校の備え学ぶ

講師の話に聞き入る受講生ら
麻生川敦さん
渋谷多佳子さん

 東日本大震災の伝承と防災の担い手育成を目的に、河北新報社などが開く第7期の「311『伝える/備える』次世代塾」が5月20日、開講した。第1、2回の講座が仙台市宮城野区の東北福祉大仙台駅東口キャンパスであり、石巻赤十字病院(石巻市)の看護師長渋谷多佳子さん(57)と多賀城市教育長の麻生川(あそかわ)敦さん(66)が登壇。大学生ら受講生87人を前に、震災当時の様子や災害の備えについて語った。

 渋谷さんは地震直後から患者や避難者が次々と病院に集まり、対応に追われた状況を「野戦病院の様相だった」と振り返った。けがの程度で治療の優先順位を決める「トリアージ」が行われる中、「命に優先順位を付けなければいけないのがジレンマだった」と心境を明かした。

 災害対応では、宮城県沖地震を想定して以前から行っていた傷病者の受け入れ訓練や食料などの備えが効果を発揮したという。一方で被災した医療従事者のケアが抜けていたことも判明した。渋谷さんは「マニュアルをその都度見直し、原発災害や感染症流行期にも備えている。頼るべきものを明示しておくと初動で迷わない」と実感を込めた。

 当時、宮城県南三陸町の戸倉小校長だった麻生川さんは、学校が海の近くにあることから津波を想定した避難マニュアルを震災前に作成していた。発災時は3階建ての校舎屋上と近くの高台へ逃げる選択肢があったが、同僚の意見も聞き入れて判断し、児童91人と教職員とともに学校から400メートル離れた高台へ避難した。

 その後、津波が校舎の屋上に達し、麻生川さんはさらに高い場所にある神社に移動して難を逃れた。麻生川さんは「災害時は正解のない判断が求められる。被災の想定を徹底した上で臨機応変に行動しなければならない」と強調した。

 次世代塾は2017年開講。第7期は宮城県内の7大学の学生と若手社会人99人が登録した。被災者や支援者、学校関係者ら震災の当事者が講師を務め、来年1月まで座学や現地視察など計15回の講座を開く。

<受講生の声>

■「自分ごと」重要
 学校の防災訓練は自分ごととして取り組む備えの意識が大事です。戸倉小は教員間で津波が来ると共有していたことが役立ちました。教員志望です。震災体験を聞く会を定期的に開くなど児童や教員が身近に捉える工夫をし、学びを生かして命を守りたいです。(東松島市・宮城教育大1年・阿部航大さん・18歳)

■防災の一翼担う
 大学では看護学を専攻し、助産師を目指しています。今回、東日本大震災後の石巻赤十字病院の取り組みを知り、災害看護に興味が湧きました。次世代塾での学びを通して災害時にどう行動するか自分ごととして捉え、地域防災の一翼を担えたらと思います。(仙台市青葉区・東北大2年・山之内真優さん・19歳)

<メモ>

311「伝える/備える」次世代塾を運営する推進協議会の構成団体は次の通り。河北新報社、東北福祉大、仙台市、東北大、宮城教育大、東北学院大、東北工大、宮城学院女子大、尚絅学院大、仙台白百合女子大、宮城大、仙台大、学都仙台コンソーシアム、日本損害保険協会、みちのく創生支援機構。

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