<記憶の素描(21)芥川賞作家・石沢麻依>ハレの街、ケの街
ハレの街は祝祭の白い影を帯びている。どこか落ち着かず、赤い靴を履いたように足が勝手に踊り出しそうな感覚と言えばいいだろうか。遠いざわめきまで耳には特別な響きをまとって届き、口の中では歯がかちりとリズムを取って、喉の奥から華やかな楽器の声があふれそうになる。非日常に飛び込もうと助走するうちに、気分は…
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