<311次世代塾>津波の猛威 現地で実感/第7期第5、6回講座
復興まちづくり 課題聞く
東日本大震災の伝承と防災の担い手育成を目的に、河北新報社などが開く通年講座「311『伝える/備える』次世代塾」第7期は8日、第5、6回講座を宮城県南三陸町の震災復興祈念公園で行った。大学生や若手社会人69人が公園内の旧防災対策庁舎などを見学し、津波の猛威や被災地の現状を学んだ。
震災当時、南三陸町の副町長だった遠藤健治さん(75)=南三陸研修センター顧問=が講師を務めた。旧防災対策庁舎屋上で津波に遭った遠藤さんは、当時の様子を振り返りながら復興の歩みを説明した。
町はチリ地震津波(1960年)など過去の震災、津波経験からマグニチュード7.5前後、津波高6.7メートルを想定した宮城県沖地震の防災対策に取り組んでいた。津波の浸水区域を予測したハザードマップを全戸配布し、町外の観光客向けに避難経路を示すラインを道路に示した。地域の自主防災組織も積極的に活動していた。
震災では16.5メートルの津波が町を襲い、831人が犠牲になった。遠藤さんは「ハザードマップの浸水想定区域外で犠牲になった人が多かった。想定外もあり得るという意識や訓練が必要だった」と語った。
町の復興計画は「命を守るまちづくり」を優先。集団移転のため山を削って高台に住宅や学校を整備し、津波浸水エリアは盛り土して市場や水産加工場、復興祈念公園になった。一方で新たな課題も生まれた。遠藤さんは「職住分離による生活の利便性の確保、移転先での新たなコミュニティーづくりが求められている」と指摘した。
講話を前に、受講生たちは公園内の丘に設けられた高さ16.5メートルの「高さのみち」を歩き、町を襲った津波の高さを実感した。講話後には、職員ら43人が亡くなった旧防災対策庁舎を前に、献花と黙とうを行い犠牲者を悼んだ。
受講生からはハザードマップの課題について質問が出た。遠藤さんは「マップは常に見直しが大事だ。配布するだけでなく、どのような条件で災害を想定したかを伝えなければならない」と力を込めた。
<受講生の声>
■庁舎の姿に衝撃
旧防災対策庁舎を初めて見学したが、壁が跡形もなく、折れ曲がった鉄骨がむき出しになった姿に衝撃を受けた。東日本大震災を知らない世代が増える中、当時の経験や記録を伝えることは重要だ。自分にできることを考え、災害の伝承や備えを実践したい。(仙台市青葉区 東北福祉大1年 菅原瑠奈さん 18歳)
■恐ろしさ伝わる
震災前の様子と被害、復興に関する遠藤さんの話から、街を壊し、生活を変えてしまう津波の威力と恐ろしさが伝わってきた。津波高16.5メートルと数字で聞いてもイメージできなかった。津波にのまれた防災対策庁舎を地上から見上げて、その高さが実感できた。(仙台市青葉区 尚絅学院大3年 佐々木翔平さん 21歳)
<メモ>
311「伝える/備える」次世代塾を運営する推進協議会の構成団体は次の通り。河北新報社、東北福祉大、仙台市、東北大、宮城教育大、東北学院大、東北工大、宮城学院女子大、尚絅学院大、仙台白百合女子大、宮城大、仙台大、学都仙台コンソーシアム、日本損害保険協会、みちのく創生支援機構。