企業SNSの中の人が気になるので会いに行ってみた。　【特集】中の人ってどんな人？

ウイークリー

　在仙企業のSNSがアツい。老舗百貨店がTwitterを始めたり、本業は建設業なのに料理動画で一躍脚光を浴びたり…。日々の投稿を担う「中の人」ってどんな人なのだろう。舞台裏を教えてもらった。

今年3月から運行している「ミニサイクロン」の前で動画を撮る八木園長（左）とシブやん

TikTokで若い世代にP R

＜八木山ベニーランド＞

　宮城でおなじみの総合遊園地八木山ベニーランド（太白区）が今、最も力を入れているSNSが動画投稿アプリ「TikTok」だ。投稿を担うのは「シブやん」こと、渋谷悠斗（はると）さん。アトラクションを紹介したり園内グルメを食レポしたりと、園の魅力をさまざまな角度からPRする。

　シブやんは24歳。以前から同年代の来園者が少ないことが気になっていた。「20歳前後に向けたアピールをしないと」。八木充幸園長に直談判し、若年層の利用が多いTikTokの運用を2022年6月に始めた。

　アイドルや企業などとのコラボも積極的に展開。フォローしていると伝えてくれた来園者にはオリジナルステッカーをプレゼントするなど、見る人を飽きさせない工夫を重ねる。

　「SNSの影響力ってすごい。口コミでも来てくれるようになりました」とシブやん。「いずれはコラボ企画で全国の遊園地を盛り上げられたら」と夢を描く。

見て見て！　イチオシ動画

【公式】八木山ベニーランド　（TikTok）

　東北最古のジェットコースターが昨年11月に引退した時、来園者にメッセージを寄せてもらい、これまでの感謝を込めた動画を制作した。「お客さんにも協力してもらった、思い入れのある1本です」（シブやん）

建設業なのに料理動画が話題　「部下」が陰の立役者

＜リンクロノヴァ＞

　会社で部下が勝手に料理を始め、「おいおいおいおい！」と社長が注意するものの、結局「うまーーーい！」とはしゃいでしまう…という動画がバズっている。総合建設業リンクロノヴァ(太白区)のYouTube「ながの社長のハッピーチャンネル」は登録者数約98万人、TikTokのフォロワーは100万人を超える人気ぶりだ。社長を喜ばせている部下って一体何者？

社長がいない間に社長席に座る部下。動画でも顔出しはしていないが、今後必要があれば顔を見せる可能性もあるという（撮影／部下の部下）

社長のリアクション　部下の企画にマッチ

　長野雅樹社長から「動画編集をしてほしい」と言われて入社しました。建設業なので、指示されるまま「空調の選び方」などを発信していましたが、これが本当につまらなかった。料理コンテンツなら見てもらえると踏んでいましたが、経費がかかるので当初は反対されました。

　社長っておちゃめでしょ。その個性が生きるように、社内コメディーの路線で試行錯誤。社長の弁当に変なものを入れて驚かせたらTikTokのフォロワーがうなぎ上りに増え、チャーハンやら唐揚げやら事務所が汚れるような料理を豪快に作るようになりました。

　僕が考えたネタに、社長の「素」のリアクションがうまくハマったんでしょうね。動画では社長にタメ口を使っているのでコメント欄で心配されますが、普段もあんな感じです。社長って変わり者。最近は人を笑わせる天才かも、と思う時があります。

　動画がバズったことで本業も絶好調。今後は視聴者の印象に残るように長尺の動画に力を入れていきたいです。あまのじゃくなんで、リクエストには基本的にお応えしません。僕がやりたいことをやり続けます。

仙台で開かれたTikTokのイベントに出演した長野社長（左）とボディーガード風の部下＝4月 15 日、錦町公園

見て見て！　イチオシ動画

ながの社長のハッピーチャンネル　（YouTube）

　「東北楽天とのコラボ企画で鈴木大地選手にかつ丼を食べてもらいました。社長も僕も野球少年だったので大喜び。社長が堂々と物まねを披露しているので、ぜひ見てやってください」（部下）

Ｔシャツ作りの動画が大当たり　フォロワーが急増中

＜ムラタック＞

　「ながの社長」に負けじとフォロワーを増やしている注目の企業がある。オリジナルのウエアやグッズを企画製造するムラタック（宮城野区）だ。今年1月にTikTokを始め、フォロワー数は半年で3万人を超えた。企画担当の小野貴博さんに話を聞いた。

「TikTokを見ましたよ、と宮城県外の展示会でも声をかけてもらえるようになりました」と話す小野さん

　ムラタックはTikTokでフォーカスしているクラスＴシャツだけでなく、プロスポーツやアーティストのグッズ、ダンスやコスプレの衣装などを自社工場で作っています。イベントの有無に受注が左右されるのでコロナ禍で売り上げ減。新しいことに挑戦しなければと思い、TikTokを活用することにしました。

　初めは反応が薄く、心が折れそうに。自分たちしかできないことを考え、Tシャツプリントに使うインクの作り方を紹介したら大当たりでした。

　若い世代へのリーチを狙ったつもりで始めましたが、実際は幅広い世代が見てくれています。先日は滋賀の自動車整備工場からユニホームの注文をいただきました。今は視聴回数にこだわらず、動画をきっかけに問い合わせが増えるような映像をお届けしたいと思っています。ムラタックの仕事を知ってもらうことが一番の目的です。

　動画撮影を条件に、スポーツチームなどにユニホームをプレゼントする企画も始めました。楽しく仕事しながらお客さんのお役に立てる会社になれたらいいですね。

見て見て！　イチオシ動画

クラスTシャツ　ムラタック　（TikTok）

　「クラスＴシャツの製作風景を紹介しました。反響の大きかった思い出深い1本です。『こんなに手間暇かけて丁寧にプリントしてもらえてるんだ』というコメントが入り、社員一同大変うれしく感じた瞬間でした」
（小野さん）

藤崎×お茶の井ヶ田　中の人が初対面

　仙台を代表する老舗のTwitterも多くのフォロワーがおり、宮城県内外に熱烈なファンがいる。藤崎（青葉区）とお茶の井ヶ田（同）、両社の「中の人」が初対面！　Twitterを始めた経緯や発信の内容、反響の大きかった思い出など本音を語り合った。

アグリエの森（太白区）で談笑する藤崎の「さきこ」さん（左）とお茶の井ヶ田の「さくら」さん

藤崎「他社と面白いことをしたい」　井ヶ田「自然体でユーザーと交流」

藤崎（以下藤）　いつも拝見しています！　リアルでお会いできるなんて光栄です！

お茶の井ヶ田（以下井）　昨年、藤崎さんの公式アカウントが開設された時は私の周囲がザワつきましたよ。「いよいよか！」と（笑）。上品で理知的な文章から年配の方だと思っていたので、若い方で意外です。

藤　入社2年目で広報担当になり、アカウント開設を上司に猛烈に訴えました。普段お客さまの目に触れない店舗の裏側などをスタッフ目線で発信することで「百貨店の堅いイメージ」を払拭したかったんです。在仙企業同士SNS上で楽しく交流しているのがうらやましかった、という理由もあります！　井ヶ田さんは「さくら」というキャラクターがつぶやいている設定ですね。

井　10年以上前からアカウントはありましたが、力を入れ始めたのは２、３年前。コロナ禍だからこそお客さまとのコミュニケーションを深めたくて、親しみやすいキャラクターとして「さくら」を生み出しました。実は昔、当社に同名の女の子のキャラクターがいて、その20年後の姿というのが裏設定です。

藤　えっ、そんな驚きの歴史が！　大人になったさくらさんは、とんかつがお好きですよね。

井　あ、バレてる（笑）。とんかつの他に焼き鳥、お酒を飲んだ後のカップラーメン……。

藤　お茶とか和菓子とかではないんですね（笑）。