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唯一無二の魅力いっぱい 【特集】地元スーパー あなたの街のオンリーワン

 目利きを生かした仕入れと客を喜ばせようとする情熱で、地元から愛され続ける唯一無二のスーパーがある。世界に1店舗だけの店内には、「新鮮」「おいしい」「便利」だけではない魅力にあふれている。

撮影協力 ミラックマツヤPLUS+多賀城店
写真 小村 仁

<ミラックマツヤPLUS+多賀城店>「食費半分」目指すミラクルワールド

店内の至る所に客への感謝などを記した手書きのポップが張られている

 日曜日の午前8時前、駐車場に積み上げられた商品段ボールを縫うように、店の前に100人近い行列ができた。数分後の開店時間、その列は軍艦マーチが流れる店内へと吸い込まれていった。 

 月に1度の「ザ・トラック市」。駐車場では、トラックの荷台や敷地いっぱいに、飲み物やスナック菓子が入った段ボールが積み上げられ、まるで迷路のよう。店内も、人気の「250円弁当」(税込み270円)をはじめ、野菜や肉、魚がずらりと並ぶ。商品を彩るように張られているのは、スタッフが客への感謝を記した手書きのポップだ。 

 店は、1938年に塩釜で始めた松屋呉服店が起源。食料品も扱うようになり、現在の多賀城店は79年にオープン。店名の「ミラック」は、英語のミラクル(奇跡)とラック(幸運)を合わせた造語。驚くほど素晴らしいことがお客さんに起きてほしいとの思いを込めた。 

 「安いだけでなく、お客さんがワクワクする本物をそろえたい」と3代目社長の小野一喜世(かずきよ)さん。「(お客さんの)食費を半分にする」という果敢な目標も掲げている。

小野一喜世さん「また来てもらえるように喜んでもらえる仕掛けをいつも考えています」

多賀城市丸山1-5-30
営/9:00~19:00(毎月1回・日曜のザ・トラック市開催日は8:00~)
休/無休
駐車場約120台
TEL 022-367-1511

<サンショップ矢本店>鮮度抜群 生きた魚が跳ねる

数時間前の競りで仕入れたばかりの魚介が並ぶ鮮魚コーナー

 ブルブルッ。ショーケースに並ぶ魚が跳ねる。近づくと、トレーに載ったソイのえらがパクパク動いているのがラップ越しに分かる。 

 アカムツ、ブリ、メバルなど数十種類の魚介類が所狭しと並ぶ鮮魚コーナー。ほとんどが、数時間前に石巻魚市場で行われた競りで直接買い付けたものだ。 

 石森伸彦常務は「この辺りのお客さんは、魚を見る目が肥えている。新鮮で安くないと」と直接仕入れにこだわる。鮮魚担当の佐藤政典営業部長は、タカアシガニやマンボウを仕入れることもあると教えてくれた。 

 1976年の創業。現店舗の斜め向かいにあったボウリング場を改装してのスタートだった。その名残で、屋根にはボウリングのピンの形をした屋外看板があり、いつしか店のトレードマークとなった。その店舗は、東日本大震災で被災。11カ月後、現在の店舗を建てて再開した際、ピンの看板は、国道に面した場所に移設した。 

 店では、0と5が付く日に行うセールが特に人気。チラシや交流サイト(SNS)には、「ちゃめっ気」たっぷりのフレーズが並ぶなど、愉快な仕掛けがちりばめてある。

鮮魚担当・浅水裕之さん「新鮮な鮮魚は市場での直接仕入れならでは。どこにも負けません」

東松島市矢本関の内52
営/9:00~19:00
休/無休
駐車場約80台
TEL 0225-82-6001

<フレッシュマート太陽東仙台店>1円でも安く 現金にこだわり

野菜はもちろん果物も充実している生鮮コーナー

 鮮魚や精肉とテーマを決めて毎週水・木曜に開催する特売セールには、午前10時の開店と同時にお客さんが押し寄せる。直後から、みるみる減っていく商品を、スタッフが追いかけるように補充していく。毎週恒例の光景だ。 

 一番の売りは鮮度抜群の野菜や果物。長年の市場通いで培った目利きと、業者との信頼関係が、良いものを安く仕入れることを可能にしている。豊富な商品は、一部が店内に収まりきらず、外のテントにも広がる。 

 1976年の創業。現在の太白区長町南で八百屋として開業した佐藤六郎商店がはじまり。85年、「地域の太陽のような存在に」との思いを込めて現店舗をオープンさせた。 

 「当初は売り上げは目標の半分だった」と2代目社長の佐藤潤さん。来店客を増やそうと試行錯誤の中から生まれたのが、水・木曜の特売セールや、毎月最終日曜日の朝市だった。「安い」とのうわさは口コミで広がり、チラシを配布していない地域からもお客さんが来るようになった。 

 佐藤さんは「お客さんと業者さんと従業員、人に恵まれて続けることができた。求められる限り応え続けたい」と明るく話す。

佐藤潤さん「1円でも商品を安く提供するため、支払いは現金にこだわります」

仙台市宮城野区東仙台1-6-47
営/10:00~21:00 毎月(毎月最終日曜は9:00~)
休/無休
駐車場16台
TEL 022-252-1213

<生鮮専果SHOJI>ずらり 八百屋の本格派スイーツ

ショーケースには果物をふんだんに使ったクレープやフルーツサンドが色鮮やかに並ぶ

 扉が開くと真っ先に、色とりどりの果物を使ったスイーツが出迎えてくれる。ショーケースには、クレープ、ゼリー、パイに加え、大根やパプリカの漬物も。店の中ほどには、新鮮な果物にくず餅をまとわせ、特殊な機械で冷凍した「葛(くず)もちバー」もある。どれも色鮮やかで、新鮮な果物をふんだんに使った八百屋ならではのスイーツだ。 

 これらを商品化させたのは、統括マネージャーの庄司京子さん。2006年ごろ、地元に人を呼び込む仕掛けとして開発を決意。スイーツ作りは素人だったが、「安く・おいしく・人に贈りたくなる」をコンセプトに、「アップル&スイートポテトパイ」を開発した。スタッフと半年以上試食を重ねた力作だった。 

 発売すると、おいしさと丁寧な仕事ぶりが口コミで広がり、すぐに売れ行き好調となった。その後も毎年のように新商品を開発、今では数十種類を数えるまでになった。 

 創業は1900年。河原町にあった市場内に開いた八百屋が始まり。30年ほど前、現店舗を建てる際、精肉や鮮魚コーナーを作りスーパーとしての構えを整えた。

庄司京子さん「商品はどれも『八百屋さん価格』。安さにも自信があります」

仙台市若林区河原町1-1-19
営/9:00~19:00
休/日曜、祝日
契約駐車場あり
TEL 022-223-3382

<マルセン>座敷童と仲良し夫婦がお出迎え

国内外から蔵を訪ねる人が後を絶たない。1000円以上の買い物をすると中を見ることも可能だ

 食料品やパックが並ぶ店の奥に、伝統的な「なまこ壁」が特徴の蔵が存在感を放つ。この蔵を訪ねて連日、全国から人がやってくる。お目当ては、蔵の2階に住むという座敷童(わらし)。出入りする業者の男性が6年前、存在を口にして以降、うわさはSNSや口コミで瞬く間に広まった。2~5歳の男女3人がいることも分かった。 

 週末になると、1日に200~300人が押し寄せ、遠く米国やドイツからも来る。その度、社長の高橋克裕さんや妻のみどりさん、克裕さんの姉の弘恵さんは、不思議な体験や現象を可能な限り説明する。「病気が治った」「結婚できた」「宝くじが当たった」と、着物やおもちゃ、お菓子を持ってお礼に来る人もいる。 

 お店は、克裕さんの父・千治郎さんが1949年に開いた。二十数年前に建て替える際、蔵を覆うように店舗を造った。 

 店内では、喫茶店の経営経験からコーヒー豆も販売。漬物で使用するこうじや業務用パック・調味料など、さまざまなものをそろえる。克裕さんは「地元の人が必要とする商品」「大手にはない楽しい商品」をモットーに、仕入れる商品を決めているという。

高橋克裕さん、みどりさん「お客さんが幸せになってくれるのが一番の幸せです」

角田市角田町82
営/9:00~17:00
休/無休
駐車場8台
TEL 0224-62-1239

あのスーパーは今

増床したエンドーチェーン「仙台駅前ビル」完成時の全景写真。店前には長蛇の列ができた=1972年6月

 スーパーとして、多くの人の記憶に残っているのは、青葉区に本社を置くエンドーチェーンだろう。1928年に現在の大崎市に衣料・雑貨店を開いたのが始まりで、62年には青葉区宮町に東北初のスーパーをオープン。85年には、県内外で最大48店舗を運営するまでに成長した。64年開店の「仙台駅前ビル」では、話題性のある催しを次々に開催、特定の展示品に触れるともらえる「タッチ証明書」は子どもたちに人気を博した。しかし80年代に入り郊外の大型チェーン店が増えると売り上げは低迷。97年にはスーパー運営から業態を転換、仙台駅前ビルを大型複合商業ビル「イービーンズ」として開業し、その運営などに集中するようになった。 

 エンドーチェーンとともに仙台商圏の一翼を担ったのは、宮城野区鶴ケ谷で旗艦店「トーコー鶴ケ谷店」を運営していたトーコーチェーン。設立は57年で、一時は仙塩地区に最大7店舗を営業するまでになった。しかし、大型店やコンビニとの競争激化により、95年6月までに全店で営業を停止した。 

 青葉区宮町や泉区南光台、若林区保春院前丁など複数店舗があった八百ふじは2018年ごろまでに閉店、仙台が舞台の青春アニメにも登場した青葉区中山のオカザキスーパーは同年9月に店を閉じた。柴田・村田両町にあったフレッシュ&ファミリア北海屋は今年1月に営業を終えた。 

 一方、仙台市中心に複数店舗を展開したモリヤ、柴田町に本部があったアイユー、県南地域で複数店舗を運営したアサノは、いずれも店舗をサンマリ(宮城野区)に事業譲渡。その多くが現在も営業を続ける。


(河北ウイークリーせんだい2023年8月24日号掲載)

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