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<記憶の素描(25)芥川賞作家・石沢麻依>翻訳家の小部屋

 10月が終わる日、通りに並ぶ家の玄関先で、あるいは庭の垣根越しに、火にちらめくにやにや笑いを目にする。目鼻の形にくりぬかれたかぼちゃ提灯(ちょうちん)の笑み。足早に夕闇が辺りを包めば、蝋燭(ろうそく)の火は橙(だいだい)色の野菜の笑みをなお鮮やかなものにするだろう。その頃になると、街の中では、奇妙…

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記憶の素描

 仙台市出身の芥川賞作家石沢麻依さんのエッセーです。ドイツでの生活で目にした風景や習慣の妙、芸術と歴史に触発された思い、そして慣れ親しんだ本や仙台の記憶を、色彩豊かにつづります。

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