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<311次世代塾>学校防災 重要性学ぶ/第7期第11、12回講座

児童の避難経路たどる/石巻・大川小

震災遺構大川小で佐藤さんの説明を聞く受講生=石巻市

 東日本大震災の伝承と防災の担い手育成を目的に、河北新報社などが開く通年講座「311『伝える/備える』次世代塾」第7期は11日、第11・12回講座を石巻市の震災遺構大川小で行った。大学生や高校生ら64人が、学校の津波被害と子どもを亡くした遺族の思い、学校防災の重要性を学んだ。

 大川伝承の会共同代表の佐藤敏郎さん(60)が講師を務めた。同小を襲った津波は2階建ての校舎の屋上に達し、児童74人、教職員10人が犠牲になった。佐藤さんは同小6年の次女みずほさん=当時(12)=を亡くした。

 佐藤さんは低学年教室前や中庭などで震災前の学校生活の様子を紹介。「震災後は『あの』大川小と言われるが、直前まで特別な場所じゃなかったと知ってほしい。保存は、当時の児童ら卒業生が学校を壊さないでと発信したのがきっかけになった」と振り返った。

 佐藤さんは、校舎と体育館の2階をつないだ通路を支えた鉄筋コンクリート製の柱が倒れたままになった箇所や、津波の到達した場所を表す裏山の目印を示しながら「海とは反対側の川の方向から、がれきや船、大量の松の木などを巻き込んで地域を襲った」と破壊力の大きさを語った。

 受講生は、授業で児童が行き来した裏山に登り、校庭との位置関係や避難にかかる時間を確かめた。

 佐藤さんは児童が校庭に51分間とどまった後、川の方向に1分ほど逃げた時点で津波に襲われた経緯に触れ「命を救うのは山じゃない。山に登るという避難行動」と強調。「判断は災害が起きてからでは難しい。『逃げるかどうか』『どこに』『逃げろ』の三つを事前に決めておくことが必要だ」と訴えた。

 受講生は震災当日に児童が移動した校庭からの避難経路を走ってたどった。佐藤さんは「あの日の子どもたちの姿を想像し、その中に自分と大切な人を入れて考えてほしい。命が助かり、未来をハッピーエンドにするのが防災の原点。われわれ遺族の悲しみや後悔を糧にして未来につなげてほしい」と呼びかけた。

<受講生の声>

■思い共有し備え
 佐藤さんは、家族や大切な人が災害で亡くなるのは悲しいことなので、人は想像するのを避けがちだと話していた。自分もためらいがあったけど、つらくても最悪を想像して大切な人と話したり、思いを共有したりすることが、次の災害の備えに役立つと感じた。(仙台市青葉区 東北大2年 逸見翼さん 20歳)

■津波 高さに圧倒
 大学の授業で聞いた大川小を訪れ、2階建ての校舎が埋もれるほどの津波の高さに圧倒された。講師の話を聞き、実際に裏山に登って学校の事前の防災対応の大切さを実感した。教員を目指している。震災時の他校の避難状況も学んで教訓を生かしたい。(仙台市青葉区 宮城教育大1年 長谷川珠姫さん 19歳)

<メモ>

 311「伝える/備える」次世代塾を運営する推進協議会の構成団体は次の通り。河北新報社、東北福祉大、仙台市、東北大、宮城教育大、東北学院大、東北工大、宮城学院女子大、尚絅学院大、仙台白百合女子大、宮城大、仙台大、学都仙台コンソーシアム、日本損害保険協会、みちのく創生支援機構。

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