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<311次世代塾>被災と復興 学び深める/第7期修了

視察や意見交換 熱心に

受講生たちは大川小の児童が震災当日に行き来した裏山に登った=2023年11月11日、石巻市
災害時の対応を考えるカードゲームに取り組む受講生たち=1月13日、仙台市宮城野区の東北福祉大仙台駅東口キャンパス

 東日本大震災の伝承と防災の担い手育成を目的に河北新報社などが開く「311『伝える/備える』次世代塾」第7期(2023年度)は全15回の講座を終えた。大学生と社会人計81人が修了し、所属先などを通じて修了証を交付した。座学と宮城県沿岸部の被災地視察を通じ、被災地や当事者の現状や課題を学んだ。

 座学は仙台市宮城野区の東北福祉大仙台駅東口キャンパスを会場に開いた。昨年5月の初回講座は石巻赤十字病院(石巻市)の看護師と宮城県南三陸町戸倉小の元校長が講師を務め、震災時の対応や避難の経過について話した。

 6月は仙台市沿岸部で救助捜索活動に従事した市消防職員、石巻の介護福祉施設で要援護者を避難させた管理者が当時を振り返り、備えの重要性を語った。

 12月は震災直後から被災地の子どもの学習支援を行うNPO代表、震災遺児や保護者の心のケアを現在も続ける東松島市の支援者が取り組みを紹介した。

 今年1月の最終第15回講座は震災体験の伝承を行う仙台市職員有志らがワークショップを実施。災害対応カードゲーム「クロスロード」では、実際に避難所で起きた事例に基づく設問に対し、どう対応するか意見交換した。各自の防災アクションを考えるプログラムも体験。個人で取り組むアイデアを発表した。

 視察は県内3カ所を訪れた。7月は南三陸町の旧防災対策庁舎、10月は気仙沼市の東日本大震災遺構・伝承館、11月は石巻市の震災遺構大川小。語り部に被災体験と復興の歩みを聞き、犠牲者に献花した。9月は仙台市の震災遺構荒浜小と名取市閖上の視察を予定したが、荒天のため収録動画の視聴に切り替えた。

 第7期は宮城県内7大学の大学生と若手社会人99人が登録した。第8期(24年度)は5月開講を予定する。募集要項と講座内容は後日発表する。

 次世代塾は「311次世代塾推進協議会」が運営。構成団体は河北新報社、東北福祉大、仙台市、東北大、宮城教育大、東北学院大、東北工大、宮城学院女子大、尚絅学院大、仙台白百合女子大、宮城大、仙台大、学都仙台コンソーシアム、日本損害保険協会、みちのく創生支援機構。

<修了生の声>

■率先し動く人に
 震災被災地を訪れ、現地を見て、経験者に直接話を聞いて、言葉だけでは分からない多くのことを感じ取った。震災や防災に関心を持ち続け、災害時に率先して動ける人になりたい。一人で学ぶだけではなく、周りの同世代に呼びかけながら一緒に学び続けたい。(東松島市 宮城教育大1年 阿部航大さん 19歳)

■遺構に足を運ぶ
 震災遺構の視察で津波や地震の威力、悲惨さを目の当たりにした。命の大切さや被災者の苦しみ、支援のあり方などを講話から学ぶことができた。災害は自分ごとだ。今ある命を守り続けるため、今後も震災遺構に足を運び、教訓や聞いた話を伝えたい。(仙台市宮城野区 宮城学院女子大2年 阿部水希さん 20歳)

■思いを引き継ぐ
 家族や生活圏を失った方、元の生活に戻れず苦しむ方の話から「自分たちと同じようになってほしくない」というメッセージを強く感じた。日本は地震が起きやすいため、過去の事例やデータ、知識で備えることが大切だ。思いを引き継いでいきたい。(仙台市青葉区 尚絅学院大3年 高谷春稀さん 21歳)

■つながり大切に
 「防災力は地域の力」。戸倉小の元校長の言葉が心に残っている。同校は地域の関係が密接で、被災時に役割分担して動くことができた。大学で建築・まちづくりを学んでいる。「つながり」を大切にする地域づくりについてこれからも考えていきたい。(仙台市泉区 宮城大2年 佐藤彩乃さん 20歳)

■地元に還元する
 震災当時はいろんなことを考えたが、時を重ねて薄れてきていたので、貴重な経験だった。石巻市大川小で聞いた「未来の子を守るための場所」という言葉が心に残った。学んだことを伝えていけば、きっと実現できると思う。地元で還元していきたい。(仙台市太白区 東北福祉大3年 池田吏望さん 21歳)

■避難動線確保を
 石巻市震災遺構大川小は、海の近くにあると思っていた。海から離れた地域でも大きな被害を出す津波の威力は、現地に行かないと分からなかった。講座を通し、災害の教訓を自分に引きつけて考えることの大切さも学んだ。家の避難の動線確保から取り組みたい。(仙台市青葉区 東北大2年 鈴木麻央さん 20歳)

■予算使途考える
 被災地で被災者の声を直接聞いた。被災状況を理解するだけでなく、社会人の目線から現場のニーズや支援の在り方、予算の使い道などについて深く考えることができた。行政を担う一員として、能登半島地震も含め、何ができるか考え続けることが大切だ。(仙台市太白区 東北管区行政評価局 坂田涼太朗さん 24歳)

■行動決めておく
 以前は地震が怖くて、震災の記憶や防災を避けていた。講座で被災地を訪ねて被災者の話を聞き、何が起きて、どんな教訓があったのか知った。いつ起きるか分からない大災害におびえて過ごすのではなく、事前に身を守る行動を決めておこうと考えが変わった。(大崎市 東北福祉大1年 岩崎思穏さん 19歳)

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