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自慢の味 温もりの接客【特集】駅前食堂へ出発進行

大崎市の鳴子温泉街 にある「ゑがほ食堂」。 長年、湯の町を訪れる 旅人をもてなしている

 間もなくゴールデンウイークだ。旅の拠点となる「駅前」はまちの玄関口として地域に親しまれ、店舗が立ち並ぶ。往時の勢いがなくなっている所があるものの、飲食店の自慢の
味と温かい接客は変わらない。JR仙台駅を出発点に、触れ合いを求めて各地の駅前食堂に出かけた。

季節ごとに多彩な具材 ~鳴子温泉駅「ゑがほ食堂」~

1番人気の山菜きのこそば

 JR仙台駅から列車に揺られ、小牛田駅経由で2時間余り。宮城県内を代表する温泉街・大崎市鳴子に着いた。その玄関口となるJR鳴子温泉駅のロータリーを出てすぐの所に「ゑがほ食堂」がある。

 店の名物は「山菜きのこそば」(1200円)だ。訪れた時は、ナメコ、コゴミ、ゼンマイ、ワラビ、マイタケ、アミタケがごそっと入っていた。店主の大場栄子さんは「5月の連休明けぐらいにはコゴミやネマガリダケは採りたてを提供できる。秋にはキノコが多くなる」と胸を張る。

 他にも「天丼」(1350円)「天ざるそば・うどん」(1450円)「温卵カレー」(1000円)も人気がある。

 店は昭和初期から続き、大場さんが3代目だ。店名には「食べた人が『笑顔』になるように」との思いが込められている。店内には、古いいすや年月を感じさせるこけしがあり、落ち着いた雰囲気が漂う。

 大場さんが店に関わり始めた1970年代は、列車に乗って鳴子を訪れる団体旅行客が多かったという。「駅前で昼食を取って温泉宿に向かう人たちで忙しかった」と教えてくれた。

 「旅の人との話が楽しいし、『おいしかった』と言われて励みになる。新型コロナ下で厳しかったが、今年は期待できるかもしれない」と来店客を一層の笑顔で迎えるつもりだ。

笑顔で来店客を迎える(左から)大場栄子さん、親戚の遊佐信子さん、大場さんの長女久美代さん
カラッと揚がったエビが2本入った天丼

【DATA】
宮城県大崎市鳴子温泉湯元2-4
TEL0229-83-3074
営/9:00〜15:00 17:00〜20:00
休/臨時休あり

※来店時に「ウイークリーを見た」と言えば温泉卵(100円)をサービス。2024年5月31日(金)まで

涌谷特産の小ネギPR ~上涌谷駅「ドライブイン 一力」~

季節によって野菜が変わるみそ辛ねぎラーメン

 JR小牛田駅から石巻線に乗って一駅進んだ無人駅、上涌谷駅で降りると、「上涌谷駅」開業を知らせる記念碑に目が留まった。線路と国道108号に挟まれた場所に「ドライブイン一力」がある。こちらもある意味、駅前食堂だ。

 店は約50年前に創業。26年ほど前に、当時の社長から、現店長の大場秀子さんと、店を手伝っていた長男の後藤大介さんが経営を引き継いだ。今は大介さんの妻静佳さんも加わって3人で店を支え、大場さんの夫輝義さんが掃除を手伝っている。

 訪れた日は肌寒かったので「みそ辛ねぎラーメン」(970円)を頼んだ。涌谷町の特産小ネギのキムチがスープになじむ。うまみと甘辛の味付けが体を温めてくれる。

 大場さんは「先代から店もメニューも全部引き継いで、そのままの形で出している。ただし、涌谷特産の小ネギをPRしたくてキムチだけはラーメンに合うように変えた」と笑う。他にも一から調理方法を見直した「角煮ラーメン」(900円)も注文がよく入る。

 店の営業は昼間だけだが、ひっきりなしに客が訪れる。家族連れが来た場合は待つのが苦手な子どもや、ゆっくり食べたい年配者に配慮して、料理を先に提供する心がけも人気の要因らしい。

 大場さんは「混雑時に外で待ってくれるような、いいお客さんに恵まれてここまで来られた。これからも家族で支え合って店を続けたい」と自然体を強調した。

店を切り盛りする(左から)後藤静佳さん、大場秀子さん、後藤大介さん
優しい味付けの角煮ラーメン

【DATA】
宮城県涌谷町赤間屋敷279-2
TEL080-2836-1616
営/11:00〜14:30
休/臨時休あり

洋食メニュー 人気二分 ~小牛田駅「上野屋食堂」~

カツが見えないほどのルーがかかっているカツカレー

 JRの東北線、陸羽東線、石巻線の3路線が乗り入れる交通の要衝が小牛田駅だ。西口を出ると、戦前の1933年に創業した上野屋食堂の建物が見える。

 食堂は国鉄時代から職員や地元に親しまれてきた。3代目の上野伸一さんは洋食店で修業したことから、ラーメンやカツ丼だけだったメニューを増やした。

 揚げたてのトンカツに、カツに合う辛さにしたルーをたっぷりかけた「カツカレー」(770円)と、ボリュームのある「ナポリタンオンザバーグ」(870円)が人気を二分する。

 上野さんは「子どもは別の仕事を選んだので、店は私の代限り。あともう少しで創業100年なので、そこまでは頑張りたい」と、きょうも厨房に立つ。

高校時代は野球部主戦投手として活躍し、体力に自信がある上野伸一さんと、社交的な妻豊子さんの夫婦が店の味を守る
ナポリタンオンザバーグ。今回紹介した2品は地元テレビ局の取材で、人気プロレスラー斉藤ブラザーズがきれいに平らげ、頼む人が増えている

【DATA】
宮城県美里町藤ケ崎町16
TEL0229-32-2414
営/11:00〜15:00
休/日曜

父の味受け継ぎ40余年 ~逢隈駅「喫茶・雑貨 青いとまと」~

1番人気のサンシャインセット。ドリンクはコーヒー、紅茶、ウーロン茶、オレンジジュースから選べる

 JR仙台駅から常磐線に30分弱乗り、逢隈駅に着いた。平安時代の亘理郡の郡役所跡である国史跡「三十三間堂官衙遺跡」を背にして無人の改札を抜けると、塔のある茶色の平屋が見えた。「喫茶・雑貨 青いとまと」の目印だ。

 看板メニューは、自家製の食パンを使った卵サンドと、ナポリタンの両方が楽しめる「サンシャインセット」(サラダ、ドリンク付き、935円)だ。店主の杉目洋子さんは岩沼や名取で店を開いていた父の味で「40年以上続くメニューです」と説明する。

 1988年に駅が開業した当時と比べて、辺りの風景はあまり変わっていないという。「よく言えばのどか。電車が見られるこの景色をお客さんが喜んでくれる。今後もゆっくりできる店にしたい」と話す。

アロマセラピーのインストラクターでもある杉目さん(左)と妹の佐藤裕子さん。中央は店の「看板娘」である孫の佐々木蘭さん
キーマカレーを使ったカレーソースハンバーグセット(ドリンク付き、1100円)

【DATA】
宮城県亘理町逢隈郡1
TEL0223-32-1556
営/9:00〜17:00
休/第1・3・5日曜

特製味噌 料理を多彩に ~矢本駅「三笠屋食堂」~

店自慢の味噌焼肉定食。単品(定食の200円引き)でも頼める

 JR仙台駅から仙石東北ラインの快速に乗って43分。矢本駅改札口の真正面に三笠屋食堂がある。1950年に創業し、戦後の町の発展を見てきた。

 店に入ると、麺類や定食、丼を紹介した写真が多くあり、選ぶのが悩ましい。特製味噌を使ったメニューが人気だと聞き、「味噌焼肉定食」(1000円)を頼んだ。

 甘辛に仕上げた味噌が国産豚肉に絡んでご飯が進む。ピリ辛の「味噌炒め定食」(950円)、「海老フライ定食」(1400円)、「茶色い焼きそば」(650円)も人気がある。

 三浦正明さん、静江さん夫妻が父から店を引き継いだ。72年に店舗が火事に遭ったり、東日本大震災などでも被害を受けたりしてきたが、そのたびに立ち上がってきた。

 静江さんは「常連さんはありがたく、久しぶりのお客さんに『懐かしい味を食べられてよかった』と言われるのもうれしい。年を取ったけれど、心のこもった品を提供します」と明るく話す。

三浦正明さんが鍋を振り、朗らかな静江さんが接客する

【DATA】
宮城県東松島市矢本栄町1
TEL0225-82-2103
営/11:00〜19:00
休/臨時休あり

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