24時間営業スーパー「トライアル」宮城に出店攻勢 迎え撃つ地元勢の戦略は?<Eスコープ>
全国でスーパーを展開するトライアルカンパニー(福岡市)が、宮城県内で新店を相次いで開業させている。7月末から11月下旬までの約4カ月間で3店をオープンさせ、来春には仙台市内に初出店する予定。価格を抑えた商品と24時間営業を武器に、新たな市場を開拓している。(経済部・水内杜子)
食料品や日用品などそろえ、安価な商品も特徴
大和町吉岡に11月20日、「スーパーセンタートライアル大和まほろば店」が開業した。午前8時半の開店前に260台分の駐車場が満車となり、町内や仙台市内などから訪れた約400人が店頭に列をつくった。
スーパーセンタートライアルは24時間営業で、食料品や日用品、衣料品などをそろえる。人気の弁当商品「三元豚のロースかつ重」(299円)、プライベートブランドの衣料品「シルキーフリース」(998円)といった安価な商品が特徴だ。来店した大和町の主婦(60)は「朝早くから買い物ができるので助かる」と進出を喜んだ。
トライアルは、自社プリペイドカードが使える商品登録機能付きの買い物カート「スキップカート」を導入したほか、システム開発や店舗建設の内製化などによって効率化を図り、コストを抑えている。
県内の出店状況は表の通り。大和まほろば店は4店目となった。来年3月ごろオープン予定の仙台市青葉区錦ケ丘では、店舗の建設工事が進む。これまでほぼ空白域に近かった仙台圏で出店攻勢をかける。
県内の店舗は全て24時間営業。野田大輔マーケティング部長(55)は「急に必要になった子どもの学用品を買い求めるなど夜間の需要は少なくない」と分析。「『生活必需品はトライアル』と思ってもらえる店舗運営を目指す」と話す。
トライアルは今年11月末現在、小型店を含め全国で335店を展開。東北は宮城、青森、岩手、福島4県で計38店を運営している。
ゆっくりレジ、直営カフェ…独自の一手で対抗
宮城県内に店舗網がある地元の小売店は、顧客ニーズを捉えながら独自の新たな一手を打ち、県外資本の攻勢に対抗している。
みやぎ生協(仙台市)は11月11日、主に高齢者や子ども連れ向けに、レジの会計や商品の受け渡しを来店客のペースに合わせて対応する「ゆっくりレジ」を県内51店のうち、仙台市内の4店舗に取り入れた。
開店から午後4時まで、各店それぞれ1カ所のレジに導入し、のぼりを掲げてアピールする。素早く対応するのが難しい来店客の後ろめたさだけでなく、後ろに並ぶ利用客のいら立ちを軽減する効果も狙う。
太白区の富沢店でゆっくりレジを利用した主婦太田直子さん(74)は「足が不自由で速く歩けない。迷惑をかけるのが嫌なので、ありがたい」と歓迎した。
神蔵諒介店長(33)は「店舗を利用している高齢者は多い。会計で焦ってお札だけを出し、財布に小銭がたまっている様子を見かける。ゆっくりレジの設置をきっかけに、利用者に優しい店を目指す」と語る。
県内で31店舗を展開するウジエスーパー(宮城県登米市)は、売り場の「仕掛け」を意識した店づくりを進め、来店客の訴求力を高める。
多くの店舗で入り口近くに季節感のある商品、旬の野菜や果物のコーナーを開設。目当ての商品をはっきりとは決めずに訪れる客に対し、アピールしている。
7店には直営カフェも設けた。メインメニューは果物のスムージー。旬の食材を使った定食も提供する。フードロス対策として始めたが「自宅で作ろう」と商品の購入につなげる狙いもある。地元の客への魅力を高めようと、総菜の味付けを地域ごとに変える取り組みも続けている。
氏家良太郎社長(41)は「食品を扱うドラッグストアなどが増え、取り巻く環境は易しくはない。『この商品ならここ』と選んでもらうために、支持される商品もブラッシュアップする(磨きをかける)必要がある」と先を見据える。
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