下水管の老朽化、地下で奮闘する企業　「こまめな補修が必要」　八潮の事故で増す存在感

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　埼玉県八潮市で１月に発生した道路の大規模な陥没事故は、地下に埋まる下水管の破損が原因だったとされる。下水管の老朽化は地上から見ることはできず、下水道を使い続けるためには定期的な点検や補修が欠かせない。昼も夜もなくメンテナンスに当たる地元企業が「影の立役者」として市民生活を下支えしている。（経済部・樋渡慎弥）

　宮城県岩沼市の建設会社佐藤建設は、老朽化した管路の改築工事を手がける。県の下水処理施設仙塩浄化センター（宮城県多賀城市）近くで３月に終えたばかりの工事で採用したのが、ＳＰＲ工法だ。

　工法の概要は図の通り。既設管と、その内側に造った新たな管のすき間に特殊モルタルを流し込んで、より強度の高い下水管に生まれ変わらせる。

　地盤を掘り起こさず、下水を流しながら工事ができる。だが、現場代理人を務めた今野陽介さん（３３）は「下水の水位がなかなか下がらず、流れも速く難しい工事だった」と語る。

　センターは仙台市や利府町など５市町の下水を処理する。対象となった管路は長さ１３７・１メートル、太さ２・５メートル。センターに近いため流量が多く、工期が１年近くあっても、管内で作業ができたのは１日当たり夜間の４時間に限られた。

　深さ１０メートル以上あるマンホール内の上り下りや手作業でのヘドロ除去、管内で発生する硫化水素の換気なども作業のたびについて回った。作業員約１０人は胴長を着用し、しゃがむと胸から汚水が流れ込むこともざらだったという。

　工事をやり遂げた今野さんは「八潮市の陥没事故を目の当たりにして、自分の仕事への責任感が増した」と振り返った。

　下水管の点検や老朽化の補修といった日常的な維持管理もなくてはならない。

　管路のメンテナンス全般を手がけるのが東亜環境サービス（仙台市）だ。込山敬規社長（５０）は「補修をこまめに繰り返さないと、漏水箇所から土砂が流れ込んで八潮市の事故と同じようなことが起こりかねない」と警鐘を鳴らす。

　宮城県石巻市に支店があり、東日本大震災後は同市全域で被災した下水管の調査に約３年携わった。震災復興の工事の増大による人手不足などで下水関係工事の入札不調が相次ぐ中、渡波地区や鮎川地区など約１０カ所で管路の災害復旧を手がけた。

　現在は県中央から県南にかけての４流域下水道で、マンホールのふたの交換や管路内の老朽化対策に当たる。流域全体のマンホール数は１４００に上るが、込山社長は「マンホール番号を聞けば、だいたい位置は特定できる」と地元業者としての自負をにじませる。

　４流域全体での補修工事は年間５０件前後で、ここ１０年ほどは５００件近い現場を踏んだ。込山社長は「きつい現場だが、嫌だからといって放置はできない。誰かがやらなければならない仕事だ」と語った。

宮城県、業者と共に維持管理

　宮城県は、県内の複数の市町村から下水を受け入れ、処理した上で海や川に流す流域下水道を７流域下水道で行っている。

　概要は表の通り。このうち県中南部下水道事務所（多賀城市）は、「下水道処理人口」が県内最多の仙塩流域下水道など４流域下水道事業を所管する。

　中南部下水道事務所によると、県は年４回、マンホールなどの点検を実施。４流域にある全マンホール１３８８カ所に関しては、全てのふたを開き、内部を確認を行う。管路のうち硫化水素などで腐食しやすい約１８キロは５年に１回、老朽化の状態などを目視で点検している。

　県は２０１８年度に管路などの長寿命化を図る「県流域下水道ストックマネジメント計画」を策定。５年ごとの見直しを繰り返しながら、地元業者などと適正な維持管理を続けている。

　中南部下水道事務所の二階堂洋技術次長は「維持管理を担っている業者は災害時の急な要請にも応じてくれる。しっかりとしたノウハウもあり、県にとってありがたい存在だ」と話す。