【日本大学】先史時代にイルカ個体群が交代 日大がDNA解析等で解明
プレスリリース詳細 https://digitalpr.jp/r/102945
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日本大学生物資源科学部の岸田拓士教授らの研究グループは,国内の複数地域の遺跡から出土した先史時代のイルカの骨をDNA解析と放射性炭素年代測定を使って分析した結果,世界規模の寒冷化が起きたとされる4200年前にイルカ漁が終了し,その後1000年間の空白期間があるとともに,この期間にイルカ個体群が異なる遺伝グループに入れ替わったことを示唆するデータを得た。4200年前の世界的な気候変動は陸上だけでなく海中の生態系にも影響を与えた可能性を示唆する成果で,気候変動と生物多様性などの関係性の解明につながると期待されている。
研究成果のポイント
• およそ8000年前 (縄文早期)から1000年前 (オホーツク文化期)にかけて、北海道道東地方を中心に3地域6地点の先史時代遺跡から出土した計54個体のイルカの骨からDNAを抽出してミトコンドリア調節領域の塩基配列を解読しました。
• 道東地方のイルカの骨は、DNAを解読した結果、カマイルカ・イシイルカ・ネズミイルカの3種に分類されました。東京湾の遺跡からは、これら3種のうちイシイルカとネズミイルカは見つかりませんでした。
• 道東釧路地方には大規模な先史時代捕鯨遺跡として東釧路貝塚(縄文前期~中期)と幣舞遺跡(縄文晩期~続縄文)があり、両者は地理的にはほぼ同じ場所に位置していますが、これら2つの遺跡から出土するイルカ類、特にカマイルカは、遺伝的に互いに大きく異なっていました。
• 放射性炭素年代測定の結果、東釧路貝塚での捕鯨活動はおよそ4200年前に終了し、その後は幣舞遺跡が築かれるまでのおよそ1000年間に渡って、当該年代を示すイルカの骨が存在しないイルカ漁の空白期が見つかりました。
• 4200年前に、世界規模の寒冷化が起きたことが知られています (4200年前イベント)。道東地方のイルカ個体群が異なる遺伝グループに入れ替わり、またこの地方における捕鯨活動が停止された時期は、このイベントとちょうど同期します。4200年前の急激な寒冷化は陸上だけでなく海中にも大きな影響を及ぼした可能性が示唆されました。
研究内容紹介
人類活動に起因する大きな気候変動に対峙しつつある現在、過去の人類活動や気候変動が当時の生物相にどのような影響を及ぼしたのかを理解することは、今後の生物多様性保全を考える上で重要です。今から1万2000年前に始まる完新世は、それ以前の時代とは比較にならないレベルで人類活動や気候変動の記録が良く残されている時代であり、この時代の野生動物の分布や遺伝構造の変化を明らかにすることで、気候変動や人類活動と生物多様性との関係性の解明が期待されます。
日本沿岸は、世界最古の先史時代捕鯨サイトの1つであり、古いものでは完新世初期およそ1万年前(縄文時代早期)の貝塚からもイルカなど海棲哺乳類の骨が出土します。本研究では、先史時代捕鯨の跡が残る東京湾および北海道道東地方の3地域6地点の先史時代遺跡(図2)から出土したイルカの骨(図1)からDNAおよびコラーゲンを抽出して、ミトコンドリア調節領域の塩基配列解読、および放射性炭素年代測定を行いました。
道東地方のイルカの骨は、古代DNA解析の結果、カマイルカ、イシイルカ、ネズミイルカの3種に分類されることが分かりました。また、東京湾からは、これら3種のうちではカマイルカのみが見つかりました。本研究で解析したイルカ類の種と遺伝組成、推定年代を図3に示します。
本研究で解析した最も古い試料は、東京湾の野島貝塚(横浜市金沢区)から出土したカマイルカで、およそ8000年前の年代を示しました。横浜のように高温多湿な環境であっても、保存状態がよければこれほど古い試料にもDNA分子が残されることが分かりました。
道東釧路地方では、縄文時代前期~中期の東釧路貝塚(釧路市貝塚)、および縄文時代晩期~続縄文時代の幣舞遺跡(釧路市幣舞町)、の2つの遺跡を調べました。試料の年代から、東釧路貝塚でのイルカ漁はおよそ4200年前に終了し、その後およそ3000年前に幣舞遺跡でイルカ漁が再開されるまで、1000年以上に渡るイルカ漁の空白時代の存在が示唆されました(図3)。また、特にカマイルカにおいて、東釧路貝塚から出土した個体と幣舞遺跡から出土した個体とで共通するミトコンドリアハプロタイプがほとんど存在せず、これら2つの遺跡から出土したカマイルカは互いに遺伝的に異なるグループに属していたことが示唆されました。
4200年前は、世界規模で急激な寒冷化と乾燥化が起きたことが知られています(4200年前イベント)。例えば、この気候変動が、エジプト古王国の崩壊やメソポタミアのアッカド帝国滅亡の原因の1つであったと考えられています。日本列島においても、この急激な寒冷化に伴って、当時最大級の集落であった三内丸山遺跡(青森市)の放棄や、礼文島における植生の大規模な変化が報告されています。本研究で示唆されたイルカ類の集団入れ替わりや釧路地方におけるイルカ漁の停止もまた、この
イベントと同期しています。
4200年前に世界各地を襲った気候変動は、陸上だけでなく海中にも大きな影響を及ぼした可能性が示唆されました。
論文情報
掲載誌
Biology Letters(英国王立協会 発行)
題名
Hidden population turnover of small odontocetes in the northwestern North Pacific during the Holocene(完新世の北西北太平洋における小型鯨類の隠れた個体群交代)
論文著者
日本大学生物資源科学部・大学院生物資源科学研究科
岸田 拓士 教授(動物学科)
鈴木 美和 教授(海洋生物学科)
山本 拓実 修士課程
竹添 七海 学部生(当時)
釧路市立博物館
澤田 恭平 学芸員
横浜市ふるさと歴史財団埋蔵文化財センター
浪形 早季子 研究員
オホーツクミュージアムえさし
高畠 孝宗 館長
ふじのくに地球環境史ミュージアム
中西 利典 教授
名古屋大学宇宙地球環境研究所
北川 浩之 教授
DOI
10.1098/rsbl.2024.0525
URL
https://doi.org/10.1098/rsbl.2024.0525
研究助成
本研究は、日本学術振興会の科研費基盤研究(B)「日本の動物相の原風景―集団ゲノミクスと古代DNAによる在来動物の集団史の解明(課題番号23K23956、研究代表者:岸田拓士)」の助成を受けました。また、放射性炭素年代測定は、名古屋大学宇宙地球環境研究所の共同利用研究として行いました。
▼本件に関する問い合わせ先
日本大学生物資源科学部
岸田 拓士 教授
TEL:0466-84-3776
メール:kishida.takushi@nihon-u.ac.jp
【リリース発信元】 大学プレスセンター https://www.u-presscenter.jp/
みやぎ地域安全情報
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