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仙台市有地塩漬け10年 地下鉄旭ヶ丘駅前の7000平方メートル 公共施設計画一転

地下鉄旭ケ丘駅前の市有地。土地利用計画が二転三転し住民が不満を募らせている=仙台市青葉区

 「計画管理がずさんで、駅前の広い土地が長年放ったままになっている」。仙台市青葉区旭ケ丘に住む50代男性が「読者とともに 特別報道室」に憤りの声を寄せた。市地下鉄南北線旭ケ丘駅そばにある約7000平方メートルの市有地に、複合公共施設を建てる計画が土壌汚染などを理由に再検討され、駐車場とする方針が2年前に示された。計画の大幅な変更に住民は不満を募らせ、10年以上続く事実上の土地の塩漬けが解消するめどは立っていない。

■取得は06年度

 問題の土地は旭ケ丘駅の南東側に隣接する住宅街の一角にある。舗装した一部を除き雑草が生い茂る。周囲を柵で囲み「市有地を暫定的に開放しているものです」との看板が立つ。

 市が2004年に発表した計画では、温水プールや障害者福祉センターなどが入る施設を整備する予定だった。土地代を除く総事業費は43億円と見込んだ。

 土地は、1982~90年に市土地開発公社(2017年解散)が約10億円かけ先行取得。一部の買収が難航し、市は06年度、金融機関への支払利息を含む約14億円で全てを買い取った。

 造成工事が進められたが想定外のトラブルに見舞われる。08年5月、地下でヒ素などの汚染物質やプラスチック片などの廃棄物が見つかった。1980年以前に埋められたとみられる。隣地の傾きや沈下も確認された。

 このため08年度に完成予定だった建物の規模を縮小する方針が10年に決まり、翌11年の東日本大震災により5年間、計画を中断する方針が示された。

■公園内に整備

 市は16年、改めて土壌調査を実施。基礎工事をすると地盤沈下や大量の廃棄物処理のリスクが拭えないなどの理由で、駅西側の台原森林公園内に施設を整備し、予定地を駐車場とする新案を17年8月、市議会に示した。

 新案の総事業費は約22億円。市は、当初予定地で建物を整備すると、建物周辺の土壌深さ14メートル程度までの入れ替えや地下水の汚染対策に追加で約59億円かかると試算した。

 市地域政策課の大村仁課長は「予定地に施設を建てるとなると地中を掘り起こす必要があり、想定外の事態を考慮せざるを得ない」と話す。

 施設を公園内に整備する新案は一帯の景観を損なう恐れがあり、地域住民は猛反発した。住民の男性は「約束が違う。地域が望まない施設を造って何の意味があるのか」と憤る。土壌対策についても「基礎くい打ちの部分だけで済むはずだ」と疑問を投げ掛ける。

 新案の提示から丸2年たった現在も、計画の先行きは見通せていない。

◎外部監査、計画の甘さ指摘 先行取得段階から施設内容検討形跡なし

 仙台市青葉区旭ケ丘の市有地を巡り二転三転した複合公共施設の整備計画はかつて、市の外部監査人からも問題視されていた。

 2004年3月の監査結果報告書によると、市土地開発公社の所有だった03年3月末時点で既に、市有地の簿価(市の買い取り価格)の利息は約4億8000万円で、土地の元値に占める割合が35%に達した。

 報告書は「土地の先行取得の段階から具体的な施設内容やスケジュールを検討した様子が見当たらない」と計画の甘さを強調。施設配置や地元要望の調整に時間を要するのも遅れの一因と分析した。

 市議会も計画に何度も疑問を呈した。見直しが報告された10年3月、市議の一人が「土地代を含め約60億円の箱物事業だ。精査が足りない」と指摘。別の市議は新案が示された17年8月に「(予定地は)駅前の一等地で(市の)財産。十分に市民に説明していただきたい」とただした。

 市によると、これまで調査や計画検討などに充てた予算は約3億円に上る。

 社会資本政策を研究する日本総研(東京)の小長井由隆シニアマネージャーは「土地の未利用による機会損失が大きい。この期に及んでは市長が積極的に説明責任を果たし、政治的に解決を図るのが望ましいのではないか」と指摘する。

 仙台市の未利用地を巡る問題は1990年代に顕在化した。2000年度に公社保有の土地約75ヘクタールの簿価が計約753億円に膨らみ、財政を圧迫した。

 自治体保有の未利用地の問題は全国的な課題でもある。明海大不動産学部長の中城康彦教授(不動産学)は「解決のためには都市計画の中での事業の位置付けをはっきり示し、今からでもアイデアを公募して利活用の合意形成を図るのも一つの手だ」と話す。
(横山勲)

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