羽生、迷いながら前へ コーチ不在の孤独な戦い 全日本フィギュア5年ぶりV

フィギュアスケートの全日本選手権男子で優勝し、観客にあいさつする羽生=26日

 フィギュアスケート男子で冬季五輪2連覇した仙台市出身の羽生結弦(26)=ANA、宮城・東北高出=が25、26日に長野市ビッグハットであった全日本選手権で5年ぶりの優勝を果たした。今年は新型コロナウイルスの世界的な感染拡大で孤独な戦いを強いられた。悩んでは乗り越える。命の尊さを考え、迷いながら歩む。(東京支社・佐藤夏樹)

 26日、完璧なフリーの演技を見せた後も共に喜ぶコーチはいない。「(コロナ下の)この世の中で胸を張って試合に出るには、コーチを呼んではいけない」。自分なりのけじめだった。

 普段はカナダ・トロントで活動する。今季はグランプリ(GP)シリーズ出場を回避し、国内で1人で調整した。初めての経験だ。つい2カ月前までは「どん底だった」ともがいていた。

 練習方法や振り付けを自分で考える日々。重圧で押しつぶされそうになる。他の選手の情報を耳にすると、取り残されたように思う。「やっていることが無駄に思えた。暗闇の中に落ちていく感じがした」

 増幅する不安。足も痛めた。4回転ジャンプはおろか代名詞のトリプルアクセルも跳べなくなった。「やめようと思うこともあった」。それでも自分と向き合い、光を探し続けた。「スケートじゃないと、自分の感情を出せない」。居場所はやはり銀盤だった。

圧倒的なスケール、圧巻の4回転 羽生結弦が5年ぶり優勝 全日本選手権

 今も迷いはある。地元の仙台で東日本大震災に遭い、避難所生活を送った。コロナ禍の現状が当時と重なるという。「僕らよりずっと苦しんでいる人がいる。最期に会えない人もいる。競技をして申し訳ないという感情がある」。待望の今季初戦も、喜びより葛藤が勝っている様子だった。

 2022年北京冬季五輪まで1年余りしかない。「東京五輪も(予定通り)できていない状況で、北京のことを考えている場合ではない。(思考を)シャットダウンしている」。平穏な生活の尊さを知るからこそ、やみくもには突き進めないと感じている。

河北新報のメルマガ登録はこちら

企画特集

先頭に戻る