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2020ニュース回顧 取材ノートから>女川原発再稼働 地元同意

3者協議を終え、記者会見で同意を表明する(左から)須田町長、村井知事、亀山市長=11月11日、県石巻合同庁舎

 2020年も残りあとわずか。記者の取材ノートから今年のニュースを振り返る。(及川智子)

<手続き、あっという間に>

 4月に開かれた女川町議会原発対策特別委員会。東北電力女川原発2号機(女川町、石巻市)の再稼働を巡って出された請願の趣旨説明があり、議論は始まったばかりだった。初めて再稼働関連の取材をしたその時点では、年内に結論が出るとは思わなかった。

 政府が県に要請した再稼働の前提となる「地元同意」手続きのため、立地自治体の議会は、賛否双方の立場から出された請願や陳情を審査した。

 最初に容認の姿勢を示したのは女川町議会だった。市民団体や地元商工団体が出した請願と陳情について、特別委は8月に賛成陳情を採択。9月定例会本会議も同じ結論を出した。石巻市議会は9月、県議会も10月に再稼働を容認した。

 11月には県内全35市町村の首長に意見を聞く市町村長会議が開催された。村井知事はその場で、自身と須田善明女川町長、亀山紘石巻市長の3者協議での判断に一任を取り付けた。

 わずか2日後に3者協議で同意を決め、村井知事が政府に伝達したのは11月18日。町議会が結論を出して以降、手続きはあっという間に進んだ。次から次へとヤマ場を迎えたにもかかわらず、同意への道は着々と開かれていった。

 国は県の、県は県議会や自治体の、自治体は地元議会の判断を重視した。立地議会の判断は首長の背中を押す。地元の意見を尊重する姿勢を見せたものの、ボールを投げられた側は難しい立場に立たされる形になった。

 議論の不十分さと再稼働を求める陳情者の間で揺れた女川町議は「政治家も学者も住民も賛否が分かれる国策の是非を、人口6000人の自治体が判断するのは無理がある」と吐露した。

 女川、石巻の両議会は同意後、避難路となる国道や県道の整備を求める意見書を国や県などに提出。須田町長、亀山市長も避難路整備を求めた。小泉進次郎原子力防災担当相は省庁の垣根を越えた支援に意欲を見せた。村井知事も予算確保に理解を示したが、確約が得られたわけではない。

 特別委の採決後、女川町議会の佐藤良一議長は「今後も事業者への監視の目を厳しくしていく」と、判断への責任の重さを口にした。同意後初の町議会12月定例会で須田町長は、避難路を兼ねる県管理道路の整備について「予算の枠組みがつくられるよう全力を挙げる」と話した。

 それぞれが悩みながらも決断し、再稼働にかじが切られた。同意したことで一層、重大事故の防止はもちろん、広域避難計画の実効性向上や避難路整備実現といった課題に向き合う責任が増す。

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