<仙台いやすこ歩き>(134)カンノーロ/大人の味 クリームが命

 米国の次はイタリアだ。なーんて、まるで海外いやすこ歩きのようだが、実際には前回のアメリカングリルに続く今回はイタリア菓子なのである。「仙台にイタリア菓子専門の店があるんだよ」という画伯のひと言で、早速向かった先は青葉区北目町。北目町交差点から南へ行くと、程なく「イタリア菓子 サヴォイ」があった。決して派手ではないが、店の前にはつややかな緑葉のオリーブの鉢が3個、片側の壁は地中海の海の色、ここに間違いない!
 迎えてくれたオーナーシェフの横山浩司さんは、きりりとした印象で、お店の歴史から教えてくれた。オープンは2012(平成24)年。それまでやっていた東京・神楽坂のイタリア料理店を前の年に閉めて、仙台に戻ってきたという。東日本大震災が転機となったが、「親も高齢になっていましたからね」と横山さん。

 さらに話を伺うと、もともとは青葉区立町でイタリア料理店を開いたのが始まりで、15年後に東京へ。なんと、イタリア料理を独学で学んだそうだ。「イタリアの持つ多様性、豊かな文化に引かれたんです」。イタリアの基盤は都市国家の集まりで、それぞれの地方が自分たちの郷土の文化を大切にし、継承しているのが魅力だと話す。「食材も多様で地元愛も強いです。料理も素朴で、あまり華美じゃないところも良かったかなぁ」

 イタリア菓子店にしたのは、また一つ新しいことに挑戦したい思いがあったからと言った後に、「飽きっぽいのかな」と頬を緩ませる。改めて店内を見渡せば、ショーケースのケーキ、棚に並んだ焼き菓子、そしてワインも。横山さんはソムリエでもあるというから、いかに探求心旺盛かがうかがえる。

 ショーケースの中に、写真が飾ってあるだけの商品があって、聞くと、「カンノーロ」といい、注文を受けてから仕上げるそう。いやすこ心がくすぐられないわけがない。「これはシチリア定番のドルチェ(デザートのこと)で、アラブ菓子でもあるんです。その昔、シチリアがアラブに征服されていた背景が影響しています」。横山さんのイタリアの食文化講座に、カンノーロへの期待は膨らむばかりだ。

 ここで、きれいに磨き上げられた厨房(ちゅうぼう)へ案内してくれた。横山さんは、朝の7時半から12時間近くほとんど菓子作りで、少なくなった順に補充していくのだそうだ。早速、カンノーロの仕上げも見せてもらう。

 既に用意されていた筒状の生地は、小麦粉、卵、ココアなどを混ぜて薄く延ばし、ひまわり油で揚げたもので、これにリコッタチーズにマルサラ酒(シチリア産ワイン)などの入ったクリームを詰めていく。最後に赤と緑のドレンチェリーを飾ると、出来上がりだ。「クリームの新鮮さが命なので、2、3時間以内に食べるのがポイント」と教えられ、2人は帰り道にあった大日如来のベンチでいただくことに。正直、早く食べたかったのです。

 少し固めのサクッとした食感の中に、まろやかな甘さのリコッタクリームの味わい。「大人のスイーツだね」「今度はサヴォイで売ってたデザートワインといただこうよ」と次のいやすこシーンが広がっていた。

おぼえがき/イタリア定番のドルチェ

 カンノーロはイタリアのパステリアにある定番的なドルチェ(優しい、柔らかい、という意味を持つ)で、形状でいうと、リコッタチーズ入りのコロネといったところである。本場はイタリアの南に位置するシチリア。カンノーロの意味は「小さな筒」で、竹やサトウキビの茎の意味もある。現代では筒状の皮の部分は、金属製の円筒に巻きつけて焼くが、昔は乾燥させたサトウキビの茎が使われていた。羊乳のリコッタとは、チーズを作った後の乳清を再加熱して作るもので、まろやかでこくのある味わいが特徴。

 本来は謝肉祭を祝って作られる季節菓子で、昔は各家庭の手作りカンノーロを贈り合った。こうした背景もあり、イタリア菓子は持ち運びを前提とするものが多いという。

 ちなみにサヴォイでは、マカロンの原型といわれメディチ家からもたらされたアマレッティ、トウモロコシ入りでカリッとした食感のズフリゾローナなど、約20種類の焼き菓子もある。

 土地には、その土地ならではの食があります。自他共に認める「いやすこ(仙台弁で食いしん坊のこと)」コンビ、仙台市在住のコピーライター(愛称「みい」)とイラストレーター(愛称「画伯」)が、仙台の食を求めて東へ、西へ。歩いて出合ったおいしい話をお届けします。

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仙台いやすこ歩き

土地にはその土地ならではの食があります。自他共に認める「いやすこ(仙台弁で食いしん坊のこと)」コンビ、仙台市在住のコピーライター・みうらうみさんとイラストレーター・本郷けい子さんが仙台の食を求めて東へ、西へ。歩いて出合ったおいしい話をお届けします。

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