鹿肉で新メニュー 肉質軟らかく、多彩な料理に 道の駅・上品の郷「レストラン栞」
石巻市小船越の道の駅・上品の郷「レストラン栞」は、有害駆除により地元で丁寧に処理加工した鹿肉を使ったカレーや煮込みの料理を開発し、提供している。鹿による農作物被害が相次いでいるだけにメニューを開発した同レストランは「的確に処理された肉は無臭で軟らかく、さまざまな料理の素材としての可能性を秘めている」とし、消費拡大を加速させる構えだ。
鹿肉は、石巻市河北、桃生、北上、雄勝4地区をエリアに県猟友会河北支部が有害駆除した鹿を使用。10年ほど前からタケノコや白菜、大根、稲、麦など鹿による食害が拡大し、対策が課題となっていた。
同支部は駆除期間中に月250頭を捕獲。期間全体では2000頭を超す。駆除後の有効活用を探るため同支部の三浦信昭支部長が営む処理加工場の丸信ワイルドミード(石巻市小船越)で肉を処理。上品の郷の直売所で2009年から販売していた。
さらに活用の幅を広げようと同レストランは、新メニューとして鹿肉に焦点を当てた。料理を総括する上品の郷の相沢洋事業本部次長が昨夏から10種類もの試作を重ね検討。「鹿肉カレー」「鹿肉カツカレー」、「鹿カツ定食」、「鹿肉煮込み定食」の4種類のメニューを昨年12月までに完成させた。
相沢次長は「しっかりと処理した鹿肉はクセがなく、『臭い』といったイメージが一気に崩れた。肉質が軟らかく多彩な料理に使える」と話す。
週末にはカレーを中心に注文が増え、鹿肉への関心が高まりつつある。相沢次長は「新型コロナウイルス禍で来店客は減少している。鹿肉は、遠のいた客足を呼び戻す『主役』のメニューになり得る」とし、今後は鹿肉料理を増やすことを検討している。
県猟友会河北支部の三浦支部長は「農地を電気柵や網で囲うなど対策を施すが被害は減ってはいない。鹿肉の消費拡大は農業を守ることにもつながる」と期待する。
メニューの考案など経営支援に当たる石巻産業創造I-Bizの吉田真一センター長は「飲食業の活性化、農業の維持と双方のメリットを生かし、コロナ禍で苦境に立つ地域産業の振興を図りたい」と話す。