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復興 首長インタビュー(上) 亀山紘石巻市長 防潮堤の住民合意に苦労

「住まいの再建を最優先した」と復興のまちづくりを振り返る亀山市長

 3月11日で東日本大震災から10年となる。甚大な被害を受けた石巻地方は、住民生活や社会基盤の再建、地域の新たな魅力づくりを進めてきた。3市町の首長に10年の歩みや復興後のまちづくりの方針、課題を聞いた。(聞き手・保科暁史)

      ◇

-震災から10年がたつ。

 「いまだに深い傷痕と悲しみの記憶が残る。家族を亡くした遺族の気持ちは言葉では言い尽くせない。失われた命に向き合い、伝承していくことが必要だ」

-10年間のヤマ場は。

 「ステージごとに数多くあった。発生直後は情報が全く伝わらず、対応が遅れた。市内は在宅避難者も多く、救済がおろそかになった。遺体安置所では棺おけがなくなり、布袋に入った遺体もあった。なすすべがなく無念さを覚えた」

 「仮設住宅への入居は、コミュニケーション維持のために地域ごとに進めたかったが、一気には建設できないため、抽選で進めるしかなかった。入居者の心のケアに何が必要か考え、地域包括ケアを立ち上げた」

-苦労したことは。

 「半島部はリアス海岸の特徴で津波が高くなる。減災のために防潮堤を築くことにしたが、時間がたつにつれ『高すぎる』『雄大な景観が失われる』という意見が出た。住民との合意が難しかった」

-できなかったことは。

 「一つは石巻駅周辺の津波復興拠点整備事業。市立病院や防災センターなどを整備したが、構想では駅を高架化したかった。ただ、相手(JR東日本)のあることなので、震災からの復興だけでは進められなかった。南北自由通路の整備など駅を中心としたまちづくりは半分できなかった」

-復興で石巻モデルと言えるものはあるか。

 「ボランティアセンターを早く立ち上げたことで多くの人が来てくれた。復旧が大きく進み、今もさまざまな形で支援してくれている。一つのレガシーだと思う。今後は行政とボランティア団体が積極的に連携することが必要だ」

-今後の市政、まちづくりの課題は。

 「人口減少社会への対応だ。市長になった2009年から大きな問題になっており、住民と行政が一体で地域の課題に取り組む協働のまちづくりを進めようと考えていた。石巻地方2市1町が連携して交流人口を拡大することも必要だ」

-新たに整備した公共施設の維持費が市の財政にのしかかる。

 「歳出を抑制することが必要だ。石巻市は職員数が圧倒的に多い。静岡県焼津市は同じような水産都市で人口も同規模だが職員数は半分。震災で膨らんだやむを得ない事情もあるが、覚悟を持って適正数まで削減する必要がある」

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