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養殖カキの水揚げ器具改良実験 東松島の伏見さん、実用化へ手応え

カキ水揚げ実験の様子を撮影する伏見さん

 水揚げの際、海中に落下するカキを少なくしようと、東松島市矢本の伏見康男さん(70)が、カキ養殖業者の協力を得て改良に取り組む器具の実証実験が2月20日、石巻市荻浜漁港近くの養殖場であった。結果は上々で、今後の実用化に向けた前進に関心が集まる。

 伏見さんは同市荻浜出身で、船舶機関士を経て建設機器類の修理業に従事していた。ダム底にたまる砂などを除去するしゅんせつ装置で特許を持つなど機器開発の実績がある。

 カキ用に開発したのは、落下防止用の針金状突起を並べた細長い半扇形の器具。ロープに点々と連なるカキの塊を水揚げする回転ドラムの上部にかぶせる。絶妙な力加減で、カキの塊を挟み込み、引き揚げる。

 棒状に付着したカキが、ドラムの回転部で直角に曲がる際、カキの塊に大きな負荷がかかるため、通常の水揚げでは多くて2割のカキが海中に落下する。「その数を減らそう」と工夫した。

 実験は荻浜港沖合3キロにある養殖場で行った。設置したカバーはアクリル板とアルミが主な素材で、軽量で簡単に着脱できる。カキを引き揚げてみると、落下は少なく、スムーズに水揚げされた。実験に協力した養殖業の伏見薫さん(56)は「可能性を感じた。実用化を期待している」と評価した。

 昨年から開発を支援している石巻産業創造I-Bizセンター長の吉田真一さん(63)は「落下防止と水揚げ作業の効率化は、養殖カキの一大産地である石巻を後押しする役割を担う」と期待する。

 開発した伏見さんは「落下防止効果を数値化し、部品製造会社と連携して本格的な開発へと進みたい」と手応えを感じていた。

 2019年7月の実験では、回転ドラムでカキの塊を引っかけて巻き上げる羽根の形状に工夫を加えた。ロープに間隔を空けてカキの塊を作る養殖形態には有効でも、棒状にまんべんなく付着させる形態の場合、難しい面があり、理論上ほどの効果は得ることができなかった。その後、水揚げの手法を徹底的に研究して根本的に見直し、新たな装置開発へと結び付けた。