石巻の未来に可能性 2025会議、本年度最後の議論
石巻地域の未来を議論するトークイベント「石巻2025会議」の第6回が5日、石巻市中央2丁目の「IRORI石巻」で開かれた。本年度の最終回として東日本大震災後の10年を振り返り、今後10年の街づくりの方向性を探った。
一般社団法人「ISHINOMAKI2・0」の松村豪太代表理事(46)と、各回のテーマリーダー4人が顔を並べた。特別ゲストにジャーナリストの津田大介さん(47)も登壇し、「ポスト311」をテーマに議論を交わした。
津田さんは「他の被災地に比べ歩みは遅いが、移住者を中心に多くの人材が残って活動している」と石巻の可能性を指摘。「これからは政治の場とアンダーグラウンドの両面で活動し、変化を起こしていくべきだ」と提案した。
全6回を通して多くの課題が挙がったが「実際に解決に向かわないと、地域住民の会議への関心は集まらないのでは」という意見や「若い世代の視点は、既に地域の内側に向いてない。社会全体に対して石巻ができることを広い視野で考えるべきだ」などの声も挙がった。
松村代表は「石巻は未来を作り得る場所だと思う。ここにいる人たちと一緒に動いて、もっとわくわくするような事象を起こしていきたい」と総括した。
◇特別ゲスト・津田大介さんに聞く
特別ゲストで参加した津田大介さんは震災直後から、石巻をはじめとする被災地で取材を続けてきた。石巻の展望などを聞いた。(聞き手・漢人薫平)
-石巻のまちづくりの印象は。
「石巻の人々は公共的なコミュニティーに対する関心が薄く、家の維持への意識が強いイメージがある。家と街の両方に接続できる隙間からのまちづくりが必要」
-石巻の10年間を見てきてどう感じるか。
「うさぎと亀で例えるなら、被災地の中でも石巻は亀だと思う。しかし他の地域と比べても、プレーヤーがこれだけ残っていることは石巻にとって大きな価値。今が折り返し地点だと思う。これからの10年で巻き返してほしい」
-どんな可能性があるか。
「『リボーンアート・フェスティバル』ほどの集客ができるイベントは、他の被災地では見たことがない。海外への訴求力もあり、アートに詳しくなくても楽しめる仕掛けがある。あと10年続ければ大きな成果になる」
-石巻に求めることは。
「復興のモデルケースになってほしい。石巻にはある種の閉塞(へいそく)感がただよっているが、ある程度恵まれているからこその停滞だと思う。危機感を持って街づくりに取り組み、アートや食文化、大自然などの魅力をもっと活用してほしい」