河北抄(3/25):かつて進学や就職のお祝いに「歳時記」が贈…

 かつて進学や就職のお祝いに「歳時記」が贈られた。四季の花木や景観、風俗を収録している。今のご時世、「スマホで分かる」と切り返されるかも。
 久しぶりに開くと、結構味わい深い。「春の宵」を引けば、風のそよそよと吹くさまとあり、俳句に続ける。<春の夜や蟹(かに)の身ほぐす箸の先 鈴木真砂女>というように。
 拙宅には、分厚い「日本大歳時記」をはじめ、コンパクト版を置いている。絵図と言葉、月の満ち欠けをデザインした歳時記カレンダーも。句の才はないけれど、これには物書きの端くれとしての業務と関係している。
 書くネタに困った時は、季節や天候の話題を取り上げよと、よく言われた。ちなみに動物園に行けとも。サル山のボスが代わったとか、いわゆる暇ネタ探しをするわけだ。
 またしても「SNSで十分」と言われそうだが、歳時記を贈ったのは何か理由があるように思う。苦しい時にこそ、優雅な心でそよそよと。やはりまだ手放せそうにない。

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