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「高校野球の監督が夢」 石巻工高硬式野球部元主将の阿部さん、体育教員に

石巻市民球場をバックに決意を語る阿部さん

 石巻工高硬式野球部の元主将で、2012年春の第84回選抜高校野球大会に出場し選手宣誓を務めた阿部翔人さん(26)が新年度、体育の教員として仙台一高に赴任する。東日本大震災から10年という節目の年に、新たな門出を踏み出す阿部さんは「夢である高校野球の監督になれるように頑張っていきたい」と意欲を燃やしている。

 「日本が一つになり、その苦難を乗り越えることができれば、その先に必ず大きな幸せが待っていると信じている」。2012年3月21日、甲子園球場での第84回大会開会式で、震災の被災地に大きな希望と感動を与えた伝説の選手宣誓。試合では神村学園(兵庫県)に5-9で敗れたものの、チーム一丸となったひたむきなプレーで、スタンドから割れんばかりの声援が響いた。

 阿部さんは石巻工高を経て日体大に進学し、野球を続けた。母校での教育実習などを経て、17年4月から石巻高の非常勤講師を務める傍ら、硬式野球部のコーチとして後進の指導にも当たっていた。部員とは年齢も近いこともあり、「兄貴的存在」として慕われる一方、野球理論などを交えながらの指導は好評を博した。

 現在、宮城水産高野球部監督でもある父親克彦さん(55)の影響もあり「小学校高学年から野球に携わる仕事をしたいと思っていた」と振り返る阿部さん。

 昨年度からは志津川高での授業も加わり、忙しさに拍車がかかっていた。それだけに「5度目の採用試験での合格に、正直ほっとしている」と心境を語っている。

 19日に開幕した第93回選抜高校野球大会で、仙台育英の島貫丞主将の選手宣誓をテレビで見たという。「立派だった。震災から10年目の年に地元宮城の高校生が選手宣誓とは。不思議な縁、巡り合わせを感じた」と自身のことを振り返りながら感想を話した。

 第93回大会に一般枠で出場した柴田高の遠藤瑠祐玖(るうく)主将は、鹿妻子鹿クラブスポーツ少年団の後輩。野球部で一緒に汗を流した控え捕手だった仙台大卒の赤間広弥さん(26)も教員採用試験に合格し、石巻小で教えることになった。

 「三重の喜び」に阿部さんもうれしさを隠せない。「高校時代のチームメート合言葉だった『諦めない心』や努力は無駄にならないということを胸に刻み、生徒たちに接したい」と決意を語っている。

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