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「渡波稲井線」30日全線開通 避難道路、物流網も強化 石巻市

稲井側から渡波地区に向かう道路とトンネル

 東日本大震災の津波で多くの犠牲者が出た渡波地区の避難道路として石巻市が整備を進める都市計画道路「渡波稲井線」が30日午後3時、全線開通する。山間部にトンネルを掘り、内陸部の稲井地区と直接結ぶ。三陸沿岸道とのアクセスも向上し、水産業などの物流網も強化される。

 渡波稲井線は全長約3・5キロで、片側1車線。牧山周辺の山間部を約700メートルのトンネルで通し、渡波地区の国道398号と稲井地区の国道398号石巻バイパスをつなぐ。30日は昨年12月に通行開始した渡波側の約800メートルを除く約2・7キロが開通する。

 渡波地区では震災時、避難する車両で渋滞が発生し、津波による被害が拡大した。内陸部に直接避難できる道路がなかったことも原因で、震災後、住民からも整備を望む署名や要望書が出されていた。

 防災機能だけでなく、経済面の効果も期待される。石巻バイパス経由で三陸沿岸道石巻女川インターチェンジへの所要時間が短縮。渡波、魚町地区に集積する水産加工業の物流効率化に加え、市都市計画課の担当者は「三陸沿岸道から牡鹿半島に向かう観光客のルートにもなる」と話した。

 同線は2014年度に着工。20年4月にトンネル部分が貫通した。JR石巻線の陸橋工事はJR東日本に委託。総事業費は約94億円で、復興交付金を活用した。

<「工業港運河線」も一部>

 石巻市が整備を進める都市計画道路「石巻工業港運河線」も30日午前10時に一部区間が開通する。

 全長は1530メートルで、北北上運河に橋を架け、釜地区の臨港道路と蛇田地区の国道45号を結ぶ。今回の開通により、臨港道路から北北上運河手前までの約1366メートルが通行可能になる。

 現在は運河での橋台設置工事が進んでおり、全線開通は2021年度末を予定する。災害発生時の避難道路や緊急輸送路の役割を担い、完成すれば沿岸部や大街道地区から運河に阻まれることなく内陸部に避難できる。

 市は渡波稲井線と石巻工業港運河線の開通式をそれぞれ30日に予定していたが、新型コロナウイルス感染拡大で県と仙台市が独自に緊急事態宣言を発出したことを受け中止した。

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