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震災テーマ、絵本「ひとりじゃない」完成 東松島TTT・武山さん制作

絵本「ひとりじゃない」を手にする武山さん(左)と高橋さん

 東松島市の東日本大震災ツアーガイド「TTT」のメンバーで、震災伝承に取り組む東京福祉大2年武山ひかるさん(20)が、同じTTTとして活動する親友の高橋さつきさん(20)をモデルに描いた絵本「ひとりじゃない」が完成した。絵本は約300部制作し、市内の小中学校に寄贈。武山さんは「絵本を通じて、災害時に命を守るための行動を考えてもらうきっかけになれば」と話す。

 「ひとりじゃない」はB5判、32ページ。震災で両親と祖父、生まれるはずだった妹を亡くした当時同市大曲小4年の高橋さんの実話を基にした。主人公は小学生の男の子に設定し、震災当日の朝や地震発生時、震災後の心の変化などを描いた。

 制作は、震災の伝承手段を考えていた武山さんが、高橋さんに「さつきの話を絵本にする」と言ったことがきっかけ。高橋さんは「ひかる以外の人が描くと言ったら嫌だと言ったと思う。自分をちゃんと見てくれているひかるだからこその描写があった」と振り返る。

 武山さんが高校3年のときに手描きの1冊が完成。複数冊の制作を見据え、大学1年の夏からは場面を加筆した上でタブレット端末での制作を始めた。

 高橋さんが絵本に入れてほしいと頼んだのは、夢の中で主人公を迎えに来た父親が「お母さんが亡くなった」と告げる場面。高橋さんの実体験に基づいている。「頭の中にずっとある場面なのでお願いした。描写が増えたことで、さらに伝わりやすいものになったと思う」と高橋さんは話す。

 今年2月にクラウドファンディングで絵本制作費を募った。目標額を超える大きな支援が寄せられた。

 タイトルの「ひとりじゃない」には「あなたを気にしている人がいる」という思いを込めた。

 武山さんは「震災後にいろいろな人と出会って、支援をもらってきた。絵本の主人公もいろいろな人と関わって成長していく。震災から得たものもあるかもしれないと、探してみようというきっかけになれば」と話す。

 2人は互いのことを「妹のような姉のような、家族のような存在」と声をそろえる。高橋さんは「絵本なら幅広い世代に伝えていくことができる。ひかるには私の体験を描いてもらい、感謝している」と話した。

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