社説(4/8):コロナ発生源/徹底解明こそWHOの責務

 世界を苦しめる新型コロナウイルスの発生源が、いまだ解明されていない。
 世界保健機関(WHO)が中国・武漢で行った調査の報告書は「自然界から動物を介し、人間に広がった可能性が高い」と従来の評価を示すにとどまった。
 具体的な感染経路を特定できなかった上に透明性や独立性が問題視され、日米欧などの14カ国は共同声明を出し、追加調査の必要性を訴えた。
 報告書が当事国の中国と共同執筆だったため、中立でないとの指摘だ。国際機関による調査の信頼性に疑義が生じるのは異例だ。憂慮すべき事態を招いたWHOの責任と存在意義が問われよう。
 中国当局はウイルスが輸入冷凍食品に付着して持ち込まれたと主張し、報告書はその可能性を排除しなかった。
 一方、米国のトランプ前政権が疑った「中国科学院武漢ウイルス研究所からの漏えい」は、極めて可能性が低いと否定した。
 中国側の主張に沿う結論が導き出されることは予想された。
 新型コロナは2019年12月に武漢で最初の症例が確認された。中国政府はそれ以来、情報公開に後ろ向きな姿勢を示し、国際社会から厳しい目を向けられてきた。
 科学的な証拠に基づく分析結果であるなら受け入れざるを得ないが、共同声明は「完全な元データや検体が十分提供されなかった」と異論を唱えた。
 WHOのテドロス事務局長も研究所からの漏えい説に関し「さらなるデータや調査が必要だ」と述べるなど資料不足を認めている。
 共同声明は「科学的調査は客観的な提言と調査結果が得られる状況下で行われるべきだ」と強調した。テドロス氏は追加の調査団を中国に派遣する用意があることを明らかにしたが、中国側は受け入れを明言していない。WHOは威信を懸け、追加調査を行うべきだ。
 新型コロナとWHOを巡り、米国はWHOを「中国寄り」と批判し、トランプ氏が脱退を表明するなど、米中の対立は先鋭化してきた。
 武漢での現地調査と報告書の公表が予定より大幅に遅れたことも、反目し合う米中関係が影響したとみられる。
 WHOの活動を大国同士の覇権争いの具にしてはならない。政治性を排除し、科学的なアプローチを尽くせるよう、WHOは独立性を確保しなければならない。
 国際社会は情報共有やワクチンの開発と供給の面で多くの課題に直面している。
 WHOと欧州連合(EU)はコロナ禍の危機対応から教訓をくみ取り、新たなパンデミック(世界的大流行)に備えるため、国際条約の締結構想を打ち出した。人道主義に基づいた緊密な国際協調を目指し、日本も推進役を担うべきである。

関連タグ

河北新報のメルマガ登録はこちら
先頭に戻る