仙台一高応援団、バンカラ守る女子団長 「伝統」の門戸開く

 有名な仙台一高(若林区)のバンカラ応援団に昨年9月、初の女子応援団長が誕生した。女子生徒が元男子高の伝統が色濃く残る応援団を率いるには、大きな覚悟がいる。同校の現役団長と、同じくバンカラで知られる仙台三高(宮城野区)応援団の団長を務めた女性に話を聞いた。
(生活文化部・越中谷郁子)

校舎屋上で、旗振りの練習をする鎌形さん=3月下旬

 春休み中の3月下旬。学ランの団長服、はだしに雪駄(せった)姿の86代団長、鎌形真咲さん(17)=3年=が1人、校舎屋上で声を張り上げていた。
 同校応援団は、全生徒が団員。希望者が幹部となり、毎年9月に全生徒による投票で団長を決める。長髪にボロボロの学ランと高げたで闊歩(かっぽ)する幹部や、仙台二高との定期戦で切れのある演舞を披露する団長は、校内外で一目置かれる存在。2010年の共学化後も全員、男子が担ってきた。
 だが、現在鎌形さんは1人で活動する。5月の仙台二高との定期戦を見据え、OBの指導を受けながら演舞の習得に励む。新型コロナウイルスの影響で、宮城県高総体で応援できるかどうかは分からない。「定期戦は、恐らく最初で最後の演舞になる。それまでにさらに技量を高めたい」と話す。

 鎌形さんは元から団長希望だったわけではなかった。室内楽部でバイオリンを演奏していた1年の秋、幹部希望の女子生徒に付き添い、「女子にも門戸を開いてほしい」と当時の団長に掛け合った。当時も団長1人で活動しており、応援団は存続の危機にあった。
 「せっかくやりたい女子がいるのに、なぜ受け入れられないのか」「同じ一高生なのに『女だから無理』と決めつけられるのが嫌だった」と鎌形さん。
 「ボロランを着られるのか?」「女の乗りが一高全体に通じるのか?」「体力はあるのか?」-。解決方法を一つ一つ探り、半年後に「男女問わず、体力テストに合格すれば幹部になれる」と決着した。
 しかし、友人は事情ができて幹部になるのをやむなく断念した。「ここで自分がやらなかったら、今までの議論がなかったことになる」。悩んだ末、鎌形さんは団長選挙に立候補。伝統を受け継ぐ決意を訴え、7割超の信任を得た。
 鎌形さんは「一高と言えば応援団」と言う。「伝統を後輩たちにつなげ、一高を目指し入学してくる女子に可能性を残すことが、自分の役目だ」

仙台三高初の女子団長「本人の心構えが第一」

団長旗を振り、応援する久慈さん=2015年(卒業アルバムより本人提供)

 「己に厳しく、きつい練習に耐えた自負、伝統の先頭に立っている気概があった」。仙台三高応援団の49代団長を務めた久慈柚奈さん(23)=旧姓遠藤=は、共学化から4年後の2013年に女子初の応援団幹部となり、14年に団長に就任した。
 入学当時は団長も幹部も不在で、学校側とOBが「女子解禁」について議論している最中だった。大声を出すのが好きな久慈さんは、「自分に合っている」とすぐ幹部入りを希望し、1年の秋にかなった。
 それからOBの指導を受けて、必死に声出しや練習に取り組んだ。翌春、その姿を見た新入生の女子が仲間に加わって団長になった久慈さんをサポート、次の団長を引き継いだ。卒業後にOBから「応援団を継いでくれてありがとう」と言われたことがうれしかったと振り返る。
 久慈さんは団長を全うした経験を踏まえ、こう話す。「身長や地声では男子より見劣りする部分があっても、威厳で補える。性別ではなく、本人の心構えが第一」

男子のなり手、全国的に不足

 応援団の状況に詳しい、鳥取大教育支援・国際交流推進機構の瀬戸邦弘准教授(48)=スポーツ人類学=によると、全国的に男子のなり手が不足し、女子がその役割を担うケースが増えているという。
 バンカラ応援団は、旧制の学校の流れをくむ伝統校に多く残っている。幹部にはステータスがあり、かつて団長は学校自治の象徴的存在だった。時代が変化しても、その価値観は卒業生だけでなく地域の人々にも共有されている。
 だからこそ「仙台一高で女子を受け入れることは大ごとだっただろう。応援団の魂をどう守るか、最終的には手を挙げた女子生徒のパーソナリティーが信頼された。文化継承の新しいスタイルを紡いだと言えるのではないか」と瀬戸准教授。
 「応援団は、学校が育んだ『近代日本の無形文化財』。剣道、茶道などと同様に日本文化の一つとして認識されるようになれば、やりたい生徒が出てきやすくなると思う」と話す。

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