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震災10年の岐路・石巻市長選(上) 復興と財政 のしかかる施設維持費

21年度内の完成を目標に工事が進む石巻市門脇町3丁目の石巻中央排水ポンプ場

 東日本大震災で甚大な被害を受けた石巻市。復旧・復興にまい進してきた10年が過ぎ、人口減少や新型コロナウイルス禍への適応などまちづくりは岐路に立つ。任期満了に伴う市長選(18日告示、25日投開票)の争点に浮上する課題と展望を探った。(保科暁史)

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 住民待望の避難道路が3月30日、開通した。沿岸の石巻市渡波地区から内陸の稲井地区にトンネルで抜ける渡波稲井線。渡波地区は内陸に直接逃げる道路がなく、震災の津波被害が拡大した。全壊した自宅を直して暮らす南黄金浜行政区長の菅野英一さん(64)は「これで安心して避難ができる」と喜ぶ。

 震災から10年がたち、防潮堤や避難道路の整備で津波への対応力は高まった。一方で、平均約1メートルの地盤沈下で大雨時の冠水が深刻化。2019年10月の台風19号では、堤防や移転団地整備の影響で水害に見舞われた地域もあった。

 市は14年に雨水排水基本計画を改定した。11カ所のポンプ場新設を計画し、20年度内の完成を目指したが、7施設は21年度にずれ込んだ。豪雨災害は全国的に頻発しており、冠水多発地区の不安は続く。

<財調残高厳しく>

 完成後も新たな難題が市にのしかかる。既存施設も含めたポンプ場の維持管理費は年6億円に上る。

 市の21年度一般会計当初予算は総額749億円で、20年度当初比で約6割減った。復興期間終了で通常規模に戻った市の財政を圧迫するのが、復興事業で整備した施設の維持管理費だ。

 4月に開館した市複合文化施設は年3億円を見込む。漁港施設や震災遺構も完成を予定し、21年度の維持費は20年度より約6億5000万円も増える。人口減少や新型コロナの影響で市税の減収も見込まれ、市は貯金に当たる財政調整基金の残高が25年度末までの5年間で約66億円減り、約9億円になると試算する。

<人件費削減図る>

 復興推進で膨らんだ人件費の削減に向け、市は昨年11月に職員定員適正化計画をまとめた。25年4月までに全体の14%に当たる222人を段階的に減らし、21~25年度で17億円の削減効果を見込む。

 ただ、同じ水産都市で人口も同程度の静岡県焼津市の職員数は半分。亀山紘市長は当初、その水準を目指したが、復興事業が遅れるとの意見を受けて「私が折れた」と明かす。復興完結と財政の両立。新市長には難しいかじ取りが待ち受ける。

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