福祉事業に本格参入 石巻・エムアールシージャパン、地元密着で支援
石巻市須江で自動車の板金修理や整備を行うエムアールシージャパン(近藤晃一社長)は本年度、車いすを積載できる車両レンタルなどを手掛ける福祉部門に本格参入した。在宅介護などで見逃されがちなサービス全般を視野に、高齢化に加え、東日本大震災でライフスタイルが大きく変化した石巻地域の福祉向上を目指す。地方における多角経営の模索としても注目を集める。
福祉部門は、自動車関連事業の傍ら2019年に始めた東松島市内での美容室経営の延長線上として、福祉車両のレンタル、販売、訪問美容などを行うMRCトータルライフアシストとして始めた。
現在、福祉車両は2台あり、同時に貸し出す車いすは最新の軽量タイプ。1台を軽自動車にしたのは、高齢者でも取り扱いがしやすく、車いすの乗り降りに必要なスペースや手間が大きく軽減される利点がある。一人乗りの小型電動車も販売している。
福祉部門を担当するエムアールシージャパンの近藤美和取締役は「車いすでの移動は意外とハードルが高い。『ちょっとそこまで買い物に行きたい』『夫婦で行楽したい』と考えても尻込みしている人が多い。公的支援、専門施設でのサービスの間にあるニーズを掘り起こしたい」と話す。
自動車修理にも精通しているだけに、障害の箇所、程度に合わせた福祉車両への改装も行う。さらにさまざまな福祉サービスに適用される公的助成の紹介など、自助と公助の橋渡し役として、個々人に必要な福祉をトータルで支援できる事業を目指す。福祉車両、用品などにはじかに触れてもらい、体験してもらうように心掛けている。
近藤社長は「ニーズに応じて大型福祉車両の導入を予定している。車いすで散策できる公園の開設など目標を持ちながらも、今必要な福祉を1歩でも半歩でも前に進める、そんな地元密着企業にしたい」と言う。
同社はシニア世代や障害のある人、子育てで離職した美容師など雇用面でも地域貢献を旗印にしてきた。異業種を連動させた経営手法は、震災を経た石巻の地元企業の在り方の一つを提示していると言えそうだ。