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石巻市長選 斎藤氏、初当選 投票率51%台で前回超え

初当選を果たし、万歳する斎藤氏(中央)=25日午後11時30分ごろ、石巻市大街道西1丁目の事務所
支持者から花束を手渡される斎藤氏(左から2人目)=25日午後11時35分ごろ、石巻市大街道西1丁目の事務所
若い支持者と握手し、感謝の言葉を伝える勝沼氏(手前右)=25日午後11時40分ごろ、石巻市大街道東4丁目の事務所
支持者に感謝を伝える長氏=25日午後11時30分ごろ、石巻市蛇田の事務所
支持者に感謝の言葉を述べる阿部氏(左)=25日午後11時15分ごろ、石巻市中央2丁目の事務所

 任期満了に伴う石巻市長選は25日投票が行われ、即日開票の結果、無所属新人で元県議の斎藤正美氏(66)=自民・立民推薦=が2万3713票を獲得し、元自民党衆院議員勝沼栄明氏(46)らを破り初当選した。

 3期12年で東日本大震災からの復興を進めた現職の亀山紘氏(78)の引退を受け、新人4氏が立候補。ポスト復興や人口減少、新型コロナウイルス対策などが問われた。投票率は51.48%で、前回(2017年)を7.17ポイント上回った。当日の有権者は11万9210人。

 新人同士の争いとなったのは2005年の新市合併時以来、16年ぶり。現市政の継承を掲げて自民、立憲民主両党が推薦した斎藤氏と、市政刷新を訴えて県議や市議が支援した勝沼氏を軸に争う構図となった。

 斎藤氏は地元出身で豊富な政治経験があることをPRし、石巻圏域の連携強化や交流人口拡大を主張した。「オール市民で誇りの持てる古里を築く」と唱え、自前の後援会に政党や業界団体が加わって組織戦を展開。幅広い支持層から票を集め、接戦を制した。

 勝沼氏は若さを前面に出し「10~20年後を見据えてほしい」と変革を訴えた。医師の知見を生かした新型コロナ対策や市政改革をアピールしたが、わずかに及ばなかった。

 元市包括ケアセンター所長の医師長純一氏(54)は市立病院改革や女川原発再稼働反対を打ち出した。草の根運動で浮動票の取り込みを図ったが、知名度不足などが響いた。

 3度目の挑戦となった元市議阿部和芳氏(61)は雇用創出や子育て環境の充実を訴えたが、支持が広がらなかった。

 斎藤氏の勝利は有権者が現市政に一定の評価を与えたと言えるが、待ち受ける課題は多い。国の復興・創生期間終了で自立が求められる市財政に、復興事業で整備した公共施設の維持管理費がのしかかる。

 被災地は人口減少の流れが全国より速い。若い世代を引きつける定住促進策は喫緊のテーマだ。震災と新型コロナで打撃を受ける地域経済の立て直しにもアイデアが要る。

 市長選では最大会派を含む過半数の市議が対立候補についた。旗印にした「オール市民」を実現し、議論の先に市政を前進させられるか。新市長の手腕が早速問われる。(保科暁史)

◇石巻市長選開票結果(選管最終)
当 23,713 斎藤 正美 66 無新(自・立推)

  20,696 勝沼 栄明 46 無新
  10,062 長  純一 54 無新
   6,558 阿部 和芳 61 無新
 

■斎藤 正美氏「後世に誇れる街に」

 25日投開票の石巻市長選で初当選した斎藤正美氏(66)の同市大街道西1丁目の事務所では、午後11時半ごろに当選確実の一報が入り、歓声に包まれた。

 間もなく姿を現した斎藤氏は支持者らと握手を交わし、笑顔で花束を受け取った。

 選挙戦を制した組織力を象徴するように、事務所には自民、立憲民主両党の国会議員や渥美巌東松島市長、須田善明女川町長、県議、市議らが駆け付けた。後継指名した亀山紘石巻市長は「魅力と活力ある石巻を再生してほしい」と呼び掛けた。

 後援会の井上誼一会長が「このご時世なのでサイレントで」と呼び掛けて万歳三唱したが、支持者からは自然と掛け声が上がった。

 斎藤氏は「力強い支援に心から感謝する。子や孫に自信と誇りを持って継承できる石巻をつくる」と述べ、頭を下げた。

(さいとう・まさみ、1954年12月、石巻市生まれ。日大工学部卒。84年に旧石巻市議初当選。87年から県議通算7期。妻と長男、長女夫婦、孫2人の7人暮らし。石巻市恵み野1丁目。)


■勝沼 栄明氏「若者たちの支援に感謝」

 午後11時半ごろ、落選の一報で石巻市大街道東4丁目の事務所に沈痛な面持ちで姿を現した勝沼栄明氏(46)は「正々堂々と戦ったが、期待に応えられずに申し訳ない」と声を振り絞り、頭を下げた。

 石巻市議17人、県議2人の支援を受け、「現状を打破し石巻を変えてほしい」と願う青年有志らが支えたが、届かなかった。

 勝沼氏は「私の力不足、努力不足。しがらみのない多くの若者の支援には感謝しかない」と述べ、今後については「後援会と相談して判断したい。今のところは白紙」と話した。


■長  純一氏、声を絞り出し「私の力不足」

 石巻市蛇田の事務所で支持者らと開票結果を待っていた長純一氏(54)は、午後11時半ごろに落選の知らせを受け「市立病院改革や福祉の充実を訴えたが、十分な支持が得られなかった。私の力不足で申し訳ない」と声を絞り出した。

 2月に市包括ケアセンター所長を辞し、本格的に選挙活動を始めたのは3月中旬。それでも、患者や開成仮診療所長時代に交流した市民を中心に輪が広がり、得票数は1万票を超えた。

 長氏は今後について「石巻の力になりたいが、今は何も考えられない」と語った。


■阿部 和芳氏、支持者を前に無念さにじむ

 阿部和芳氏(61)は午後11時すぎ、石巻市中央2丁目の事務所で支持者を前に「皆さんと歩んできたが、私の力不足で申し訳ない。支援に感謝している」と無念さをにじませた。

 市長選は3度目の挑戦。子育て環境や雇用の充実、行財政改革などを掲げ、これまで以上に有権者の元へ足を運んだ。徹底した草の根運動は手応え十分だったが、他陣営が組織戦を展開する中で票は伸び悩んだ。

 次期市長には「市民に寄り添った市政、古里に愛着を持ってもらえるような市民を巻き込む取り組みが必要だ」と望んだ。

 

石巻市選管、斎藤氏に当選証書

 石巻市選管は26日、25日投開票された石巻市長選で初当選した斎藤正美氏(66)に当選証書を交付した。任期は29日から4年間。

 市役所で付与式があり、市選管の斎藤洋一委員長は「市民の期待を背負い、リーダーシップを発揮してほしい」と述べ、証書を手渡した。斎藤氏は「使命感、責任感をあらためて持った」と語った。

 亀山紘市長との事務引き継ぎ式もあり、市政の懸案事項などを共有した。

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