<東北の本棚>集落のつながり考える

地域学をはじめよう 山下 祐介 著

 NHKのテレビ番組「ブラタモリ」が人気だ。あんなふうに街を歩いてみたいけれど、案内してくれる専門家が周りにいない。ならば、自分で地域を探索してみてはどうだろう。
 「(東京の)多摩ニュータウンに地域はあるか」。本書はそんな問いをきっかけに、地域とは何か、人々の営みにどう関わっているのかを論じる。調査例を豊富に織り込みつつ、実習方法まで分かりやすく解説した地域学の入門書だ。
 「その地に人々が暮らしている以上、必ず地域は存在する」と著者は言う。ニュータウンもかつては村の一部だった。分譲マンションには居住者の組合があり、夏祭りや防災も元の村の組織に参加することで補う。地域がないと思う人も、周りの地域に頼って生活は成り立つ。
 地域とは町内会や地区会のような自治の単位だ。これらが集まって市町村をつくり、結節的な場所として都市があり、国家全体の統治を実現している。地域は互いにつながり合っており、小さな地域にも全体における役割がある。
 つながりを明らかにするには、水を見ることだという。著者は青森県田舎館村の水田跡につながる水路に着目。水上にさかのぼれば、水がせき止められ、田舎館城が廃城になった歴史にたどり着く。地域にある物をたどり、集落のつながりを考えるのが地域学の面白さだと説く。
 地域学は、対象とする地域やテーマを決めることから始まる。都道府県を選び、市町村の配置や人口、地形、交通施設を確認。神社仏閣や文化財の歴史を調べ、現場を歩き、話を聞く。地道で泥臭い作業だが、特殊な技能や高度な知識は必要ない。
 著者は地域社会学などが専門の元弘前大准教授。青森や山形の調査例を数多く紹介しており、東北人になじみやすい内容だ。読了後は地図を片手に、街をぶらぶらと歩きたくなる。(江)

 岩波書店03(5210)4000=990円。

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