社説(5/17):輸出用の日本酒製造/新制度生かし 需要取り込め

 輸出用に限って日本酒を製造できる免許の申請受け付けが本年度、始まった。国際的な日本酒人気を受けた新制度で、輸出拡大を政府が後押しする。日本酒はクールジャパンの重要な柱を成す。東北地方の創生に向けて、酒造りの伝統と良質な味わいを世界に売り込むチャンスにしたい。

 酒税法の規定で、日本酒の酒蔵・事業者は製造場ごとに最低製造数量基準(年間60キロリットル)をクリアしなければ免許を受けることができない。

 供給過多と競争激化による事業者の経営悪化を懸念して、新規参入は事実上、制限されてきた。2020年度の税制改正で新設された輸出用製造免許は、60キロリットルの基準適用が除外された。

 国税庁は(1)特定の輸出国をターゲットに高付加価値の日本酒を少量から製造できる(2)新たに輸出用の日本酒製造事業に参入できる(3)委託醸造の商品を輸出していた事業者が自社製品の輸出に切り替えられる-などと宣伝する。

 大変革とも言える制度の新設に踏み切った背景には、日本酒の国内消費の低迷と海外需要の大幅な伸びがある。

 日本酒の課税移出数量(事業者から出荷された量)は1973年度の177万キロリットルをピークに、2019年度は46万キロリットルまで減った。少子高齢化や健康志向の高まりに伴い数量減のトレンドが続く。

 一方で、日本酒の20年の輸出金額は約241億円に上り、11年連続で前年を上回った。上位の国・地域には、香港(シェア25・6%)、中国(24・0%)、米国(21・0%)、台湾(5・9%)、シンガポール(4・6%)、韓国(4・1%)が名を連ねる。

 日本酒が受け入れられる確固たる理由がある。食材の持ち味を生かし、栄養のバランスや季節感、ヘルシーさも兼ね備える和食が外国人の人気を博していることだ。海外の日本食レストラン数は19年の調査で、06年比6・5倍の約15万6000店に上る。

 13年12月には「和食 日本人の伝統的な食文化」が国連教育科学文化機関(ユネスコ)の無形文化遺産に登録された。和食ブームとの相乗効果で日本酒の需要が膨らみ、しかも単価の高い商品の引き合いが強まっている。

 総務省の家計調査を見ると、20年の国内の酒類消費動向は新型コロナウイルスの流行が影響し、飲食店消費が大幅に落ち込んだ。半面、貿易統計によれば、酒類の輸出動向は20年8月以降、前年を17~68%上回る旺盛さを示す。

 世界全体の酒類市場規模は100兆円を超えると言われている。国産酒類の輸出金額は約710億円にすぎない。商機は間違いなくある。

 刺し身から味が濃い保存食まで酒菜を選ばない日本酒の強みは、フランス料理にも中華にも合う奥深さだ。他国料理とのペアリングを進め、消費者層を広げる必要がある。好機を逃す手はない。

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